こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

2019-01-01から1年間の記事一覧

<国内でも国外でも>医学系学会でのポスター発表~ポスター作成時の注意点など~

本日は学会ポスター作成についてです。 学会ポスター作成時の注意点 1.使用ソフトについて 2.ポスターの大きさについて 3.ポスター素材について 4.フォント・文字サイズについて 5.ポスター作成の期限 6.実際のポスター 以前に私が参加した国際学会に…

【実験プロトコール】細胞の継代

実験プロトコールについて書いていきます。 この目的は、自分の頭の整理・知識の確認の他に、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」的な、文献や教科書に載っていないけど知ってるとちょっと役立つようなことを記録しておくことです。 正確性には注意を払ってお…

3D培地ZTGを用いたex vivoでの造血前駆細胞培養【文献紹介】

前回の投稿からまた少し間隔が空いてしまいましたが(抄読会やら学会発表準備やらあり)、再び文献紹介です。 今月7日にPublishされたばかりの論文です。抄読会で扱いしましたので、抄読会で使用下スライドなども使用しながら解説していきます。 今までは和訳…

自分が書いた症例報告のレビューと論文投稿に関するTips~後編・右房内血栓~

前回に引き続き、先日publishされた自分の論文をレビューしつつ、若手医師(だいたい初期~後期研修医くらい)が雑誌投稿する際のsuggestionを簡単にしていきます。 前回はこちら↓ 自分が書いた症例報告のレビューと論文投稿に関するTips~前編・胃がん脊椎転…

自分が書いた症例報告のレビューと論文投稿に関するTips~前編・胃がん脊椎転移~

先日、2つの症例報告がOxford Medical Case Reportsに掲載されました。 といっても1つはclinical pictureです。 自分の論文ですが、自分でレビューしつつ、若手医師(だいたい初期~後期研修医くらい)が雑誌投稿する際のsuggestionをかるーくできればと思って…

細菌による腫瘍内への治療薬運搬:全身性抗腫瘍免疫応答【文献紹介】

再び文献紹介です。今回は、これまでに比べると短めにまとめました。 細菌に手を加え、治療薬を腫瘍内に運び込むという新しい免疫療法の可能性について述べられています。個人的にはアブスコパル効果というものがおもしろかったです。 ---------------------…

ウェスタンブロッティング:新しい抗体

本日も再びウェスタンブロッティングです。 これまでのウェスタン関連記事はこちら↓ ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多すぎるとき① - こりんの基礎医学研究日記 ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特…

細胞表面インスリン受容体は、インスリンと結合すると膜内に移動しインスリン調整を媒介している【文献紹介】

本日も文献紹介です。これも以前に抄読会で取り上げられたものです。 ------------------------------------------- Insulin Receptor Associates with Promoters Genome-wide and Regulates Gene Expression Melissa L.Hancock et al. Cell Volume 177, Iss…

転移微小環境における実質細胞の役割【文献紹介】

少し前に抄読会で扱った論文です。 癌細胞が体内の他の場所に転移するには、まず転移先の環境が整っていなければならないとされており、今回はこれを乳がん細胞を用いて証明しようとしたものです。転移性癌細胞が細胞透過性タンパク質を放出し、まず転移が起…

ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:1次抗体と2次抗体を変えてみる。

すっかりブログの更新間隔が空いてしまいました。 先週は実験が忙しく、投稿できませんでしたが、今後は自分の勉強のためにも投稿を増やしたいと思います。 さて、大学院入学後半年ほど臨床をやって10月から基礎を始めたため、今日でちょうど基礎研究を始め…

片頭痛【当直振り返り】

昨夜の当直の振りかえりです。 現在2か所の病院に救急当直アルバイトに行っています。 どちらもいわゆる北米型ERタイプです。 1.中規模病院 約500床 2次救急 2.中規模病院 約200症 2次救急 →今回こちら 片頭痛発作の女性の方を診ました。片頭痛について少…

死後の豚の脳の蘇生

NEWS 17 APRIL 2019Pig brains kept alive outside body for hours after deathRevival of disembodied organs raises slew of ethical and legal questions about the nature of death and consciousness.Sara Reardon 少し前のものですが、Natureの記事で…

CCR5シグナル伝達はマウス・ヒトの放射線照射後造血再生を促進する

再び文献紹介です。 少し前ですが、抄読会で取り上げられたものです。 --------------------------------------------- Stem Cell ReportsVolume 13, Issue 1, 9 July 2019, Pages 76-90 CCR5 Signaling Promotes Murine and Human Hematopoietic Regenerati…

ドイツ旅行記【黒い森・シュバルツバルト】その3

以前の旅行ブログで、最後にフランクフルトについて紹介すると書きましたが、すっかり時間が経ってしまいました。 これまでのブログ記事は以下の通りです。 ドイツ旅行記【黒い森・シュバルツバルト】その1 - こりんの基礎医学研究日記 ドイツ旅行記【黒い森…

Hippo経路(Hippo signaling pathway)

今日は、抄読会で取り上げられたHippo経路(Hippo signaling pathway)というものについて勉強してみましたので紹介します。 Hippo経路とは Hippo経路に関する文献流し読み 1.Hippo経路とは ★Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路とは? 細胞内シグナル伝達経路の1…

レンチウイルスベクターの保存方法【短期保存】

今日は珍しく連投です。今回の記事は短いですが。 以前レンチウイルス長期保存に関する記事を書きました↓ レンチウイルスベクターの保存方法 - こりんの基礎医学研究日記 最近またウイルスを使用する機会があり、今度は短期保存について調べてみることにしま…

レンチウイルスベクターによる遺伝子治療を用いたAkp2ノックアウト/低ホスファターゼ症マウス治療

再び文献紹介です。最近読んだHPP関連の文献です。 -------------------------------------- J Bone Miner Res. 2011 Jan; 26(1): 135–142. Published online 2010 Aug 4. doi: 10.1002/jbmr.201 PMCID: PMC3179312PMID: 20687159 Prolonged Survival and Ph…

急性喉頭蓋炎

最新のNew England Journal Images of Cilinical Medicineです。 今回は急性喉頭蓋炎についてです。 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1816761 48歳の男性で3日ほどの嚥下時痛や発熱、呼吸困難を主訴に来院し、Thumb signをきっかけに急性喉頭…

救急外来におけるラクテート【文献紹介】

本日も文献紹介です。今月のAnnals of Emergency Medicineの記事です。 Demystifying Lactate in the Emergency Department=救急外来におけるラクテートの謎解き(?)という面白いタイトルでしたので、読んでみました。 救急外来でラクテートに助けられる場面…

【文献紹介】AAVベクターを用いた骨標的アルカリホスファターゼ筋注による低ホスファターゼ症の治療

最近読んだ文献の内容を紹介します。 ------------------------------------------------- Mol Ther Methods Clin Dev. 2016 Feb 3;3:15059. doi: 10.1038/mtm.2015.59. eCollection 2016. Treatment of hypophosphatasia by muscle-directed expression of …

トランスフォーメーション後培養は要るのか要らないのか?

昨日は大腸菌へのトランスフォーメーションを行いました。 半年ほど前にはやる機会がたくさんありましたが、その後しばらくは別の実験をしており、昨日久しぶりにやる機会がありました。 今日はトランスフォーメーション後培養(英語では"outgrowth", "recove…

Sleeping Beautyトランスポゾン【備忘録】

先日読んでいた論文にSleeping Beautyトランスポゾンなるものが出てきました。 トランスポゾンについていくつか勉強したこと主に自分用のメモとして残します。 ・トランスポゾンとは…移動するDNA(ゲノム上を移動できる)。 ・トランスポゾンが移動してしまう…

ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多すぎるとき②

前回、ウェスタンブロッティングの際の2次抗体について書きました。 ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多すぎるとき① - こりんの基礎医学研究日記 ***追記(2019/10/1)*** ウェスタンブロッティングに関しては以下記事も書き…

ドイツ旅行記【黒い森・シュバルツバルト】その2

前回の続きです。 前回は ①ボルファッハ・オーベルボルファッハ ②ストラスブール について紹介しました↓ ドイツ旅行記【黒い森・シュバルツバルト】その1 - こりんの基礎医学研究日記 ③フロイデンシュタット フランクフルトからボルファッハに行くとき、ボル…

ドイツ旅行記【黒い森・シュバルツバルト】その1

いつも研究関連の話が多いですが、今回は夏休みのドイツ旅行の話を書きたいと思います。 家族の仕事の都合でドイツの田舎町オーベルボルファッハに1週間ほど滞在する機会があり、その際に回った町のことについて書きたいと思います。 シュバルツバルト=黒い…

ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多すぎるとき①

ウェスタンブロッティングはタンパク質を検出する方法で先日まで毎日のように行っておりました。 ***追記(2019/10/1)*** ウェスタンブロッティングに関しては以下記事も書きました。 ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多す…

精巣捻転に関するレビュー

本日も臨床論文紹介です。 先日の救急外来当直の際に、18歳の精巣捻転を見ましたので、レビューを読んでみました。 Contemporary Review of Testicular Torsion: New Concepts, Emerging Technologies and Potential Therapeutics www.ncbi.nlm.nih.gov 【背…

ジェノタイピング:バンドが多すぎるとき

ジェノタイピングとは…遺伝型の判定のこと。 今回はある遺伝子ヘテロ(+/-)とWildType(WT=+/+)を掛け合わせて生まれてきたマウスの子供のジェノタイピングを行いました。 ある遺伝子に関して(+/-)と(+/+)のマウスを掛け合わせると、(+/+):(+/-)=1:1で生まれる…

マウスへの後眼窩静注

マウスへの造血幹細胞移植や薬液静注は後眼窩に行われますが、初心者にとっては簡単ではありません。 もう1つの方法として、尾への静注という方法もありますが、どちらもほぼ同等の効果が得られ、後眼窩への静注は合併症も少ないと書かれています。 www.ncbi…

スター活性:制限酵素で非特異的な場所が切れてしまう理由

今やっている実験ではありませんが、以前やっていた実験で、ベクタープラスミドを2つの制限酵素でカットするというのがあったのですが、その時のことを少し書きます。 今回はEcoRI-HFとPacIの2つの制限酵素でプラスミドをカットし、その後電気泳動を行い、き…