こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

タモキシフェンの白血病に対する作用

勉強したことのメモです。 タモキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーター (Selective estrogen receptor modulator)=SERMの1つ。 乳がんの治療などに用いられる。 白血病を抑える効果がある可能性が複数の文献で指摘されている。 Sánchez-Aguil…

AKIとCHは関連している

お久しぶりの更新となってしまいました。 久しぶりに勉強したことのまとめを書いてみます。 Vlasschaert C, et al. Clonal Hematopoiesis of Indeterminate Potential is Associated with Acute Kidney Injury. medRxiv [Preprint]. 2023 May 17:2023.05.16.…

インバースPCRを用いたプラスミド変異の入れ方 Site-directed mutagenesis

本日はPCRを利用してプラスミドに任意の変異を入れる方法について紹介していきます。 PCRを用い、プラスミドDNAの一部を書き換えたり、欠損させたり、任意の配列を挿入したりすることができます。 通常のPCRは以下の図のように内向きの2つのプライマーを用い…

ウェスタンブロットのゲル作成

前回の更新からしばらく日が空いてしまいましたが、再び勉強したことや実験でやったことなどを記録していこうかと思います。 本日はウェスタンブロットのゲルを作成しました。ウェスタンは以前にもやったことがあるのですが、その時は市販のゲルを使っていま…

多発性骨髄腫に関するevidenceあれこれ

いろんな論文の詰め合わせ、備忘録的な意味合いが強いです。 日本人移植非適応新規多発性骨髄腫患者に対してD-VMPはBMPよりPFSとOSを延長させる。安全上の大きな問題はなし。(ALCYONE試験)【日本血液学会2020】 OS NR vs 43.9ヵ月 PFS NR vs 20.4ヵ月 D-VMP…

MGUSのマネージメント

MGUS(=monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症 今日の臨床サポートより 血中にM蛋白を認めるが少量で、高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変といった形質細胞腫瘍に関連した臓器障害…

多発性骨髄関連腎障害のマネージメント

多発性骨髄腫(MM)の患者はしばしば腎障害を来す。 それに関するレビュー。 Dimopoulos MA, et al. Management of multiple myeloma-related renal impairment: recommendations from the International Myeloma Working Group. Lancet Oncol. 2023 Jul;24(7)…

DLBCLは早期に再発するほうが予後が悪い

Hilton LK, et al. Relapse timing is associated with distinct evolutionary dynamics in DLBCL. medRxiv [Preprint]. 2023 Mar 8:2023.03.06.23286584. doi: 10.1101/2023.03.06.23286584. Update in: J Clin Oncol. 2023 Jun 15;:JCO2300570. PMID: 3694…

CLLに対するアカラブルチニブ

慢性リンパ性白血病(CLL)に対するアカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の使用についての文献を3つ取り上げる。 まずアカラブルチニブの概要について。 BTK阻害薬の1つ。他のBTK阻害薬としてイブルチニブ、チラブルチニブなどがある。 B細胞受容体シグナル伝…

レナリドミドの皮疹

レナリドミドは多発性骨髄腫の主要な治療薬の1つ。骨髄異形成症候群やマントル細胞リンパ腫で使用される。 レナリドミド(LEN)の代表的有害事象の1つである皮疹(skin rash)について取り上げる。 皮疹はLEN使用者の最大1/3で見られる。(一般的に22~33%) Grade3…

CMLの治療をやめられるとき

慢性骨髄性白血病(CML)患者は以前は生涯TKI内服を継続しなければならなかたが、近年ではTKI治療中止が新たな目標となっている。 ※CML患者の平均余命は一般集団に近づいている。 Bower H, et al. Life Expectancy of Patients With Chronic Myeloid Leukemia …

再発難治性多発性骨髄腫に対するイサツキシマブ

イサツキシマブは、ダラツムマブの次に登場した抗CD38モノクローナル抗体製剤。 造血器悪性腫瘍の腫瘍細胞表面に高頻度に発現するヒトCD38抗原に結合することで、抗悪性腫瘍効果を発揮する。補体依存性細胞傷害(CDC)作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用…

AML治療の新しい鍵:ベネクレクスタを用いた治療について

近年頻繁に使われるようになったベネトクラクスを用いたAML治療に関するいろいろをメモ的に集約します。 ベネトクラクスとは BCL-2阻害薬。腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。 BCL-2は通常は細胞内のミトコンドリアに存在しており、アポトーシス抑制作用が…

予後良好DLBCLの化学療法はR-CHOP4コースでOK

2022年より国内承認されびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)の標準治療はR-CHOP療法からPola-R-CHP療法となった。当院でも基本的にDLBCLの方はPola-R-CHP6コース+R2コースで治療している。 しかしLow risk DLBCLの場合は、Pola-R-CHPの方が有意と言うわけ…

DLBCL患者のCNS再発予防

びまん性大細胞性リンパ腫(DLBCL)の中枢神経(CNS)再発は、全生存期間(OS)中央値が6か月未満と致死的な合併症。なので予防が大切。 El-Galaly TC, et al. Treatment strategies, outcomes and prognostic factors in 291 patients with secondary CNS involve…

How I treat CLL patients with ibrutinib

文献紹介。自分用の備忘録的な位置づけです。 BloodのHow I treat CLL patients with ibrutinibまとめです。 Introduction IbrutinibはCLL患者のあらゆるフェーズで有効な薬剤の1つ。 RESONATE試験では、4年間のフォローアップで途中中断患者は12%ほど。多…

未治療マントル細胞リンパ腫に対する治療はBRにイブルチニブを重ねると治療成績が向上する

Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in Untreated Mantle-Cell Lymphoma 未治療マントル細胞リンパ腫に対するイブルチニブ+ベンダムスチン・リツキシマブ療法 Wang ML, Jurczak W, Jerkeman M, et al. Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in…

【文献紹介】HSCは炎症刺激によって老化する

久しぶりの記事更新。だいぶ間が空いてしまったが基礎系の記事の紹介。 Bogeska R, Mikecin AM, Kaschutnig P, et al. Inflammatory exposure drives long-lived impairment of hematopoietic stem cell self-renewal activity and accelerated aging. Cell …

【備忘録】★Forrest plotの作り方★

自分用の備忘録。 Forrest plot フォレストプロットの作り方。 ※Rとprismを併用。 https://www.mdf-soft.com/Prism6_UserGuide/index.htm?forest_plot.htm https://www.youtube.com/watch?v=UCGrNW1kLRo 1.Rで信頼区間を計算。 2.回帰係数推定値、95%信頼…

大学院卒業式~医学博士~

本日は大学院の卒業式でした。 学位審査後の流れを書いてみます。 1/6 学位審査 2/7 修正後論文提出 ~主査の先生とやりとして修正作業~ 2/18 合格 2/22 博士論文最終提出 で、今日3/24卒業式ということになります。 上記スケジュールのうち~主査の先生と…

【文献紹介】腸内細菌叢はIL-1を介しHSCの加齢に伴う骨髄バイアスを引き起こす

Bloodに掲載された論文の紹介です。 Kovtonyuk LV, Caiado F, Garcia-Martin S, Manz EM, Helbling P, Takizawa H, Boettcher S, Al-Shahrour F, Nombela-Arrieta C, Slack E, Manz MG. IL-1 mediates microbiome-induced inflammaging of hematopoietic ste…

腸内細菌叢①

腸内細菌叢に関して過去に勉強したスライド 腸内細菌叢を取り扱った文献を2つ紹介。 腸内細菌叢の多様性低下は様々な疾患の 原因となる。CD腸炎の可能性を上げる肥満の発症率を高める造血幹細胞移植後の患者の死亡率と相関している 腸内細菌叢は体内のホメオ…

腸内細菌叢②

腸内細菌叢に関して調べたことまとめ。

樹状細胞はどうやって脾臓にとどまっているか

抄読会で扱った文献の紹介。 RESEARCH ARTICLE IMMUNOLOGY Share on CD97 promotes spleen dendritic cell homeostasis through the mechanosensing of red blood cells DAN LIU HTTPS://ORCID.ORG/0000-0002-5601-8053, LIHUI DUAN, LAUREN B. RODDA HTTPS:…

【レビュー】造血幹細胞の老化~その4~

Reviweの解説。何回かにわたっていきます。 まだまだ続いていきます。 Review Open Access Published: 23 November 2020 Molecular and cellular mechanisms of aging in hematopoietic stem cells and their niches Lei Zhang, Ryan Mack, Peter Breslin & …

造血幹細胞とTFEB

抄読会で扱った論文の紹介です。 García-Prat L, Kaufmann KB, Schneiter F, et al. TFEB-mediated endolysosomal activity controls human hematopoietic stem cell fate. Cell Stem Cell. 2021 Oct 7;28(10):1838-1850.e10. doi: 10.1016/j.stem.2021.07.0…

HSCは生涯に5回しか分裂しない

造血幹細胞(HSC)の細胞分裂周期に関する論文。 Wilson A, Laurenti E, Oser G, van der Wath RC, Blanco-Bose W, Jaworski M, Offner S, Dunant CF, Eshkind L, Bockamp E, Lió P, Macdonald HR, Trumpp A. Hematopoietic stem cells reversibly switch from…

【レビュー】造血幹細胞の老化~その3~

Reviweの解説。何回かにわたっていきます。 Review Open Access Published: 23 November 2020 Molecular and cellular mechanisms of aging in hematopoietic stem cells and their niches Lei Zhang, Ryan Mack, Peter Breslin & Jiwang Zhang Journal of H…

【レビュー】造血幹細胞の老化~その2~

Reviewの解説。何回かにわたっていきます。 Review Open Access Published: 23 November 2020 Molecular and cellular mechanisms of aging in hematopoietic stem cells and their niches Lei Zhang, Ryan Mack, Peter Breslin & Jiwang Zhang Journal of H…

マウスの週齢とヒトの年齢の相関

なんとなくは知っていましたが、ちゃんと調べたことはあまりなかったので調べてみました。 造血に関する実験を今回は想定。 マウスの造血の加齢伴う変化はヒトと類似しているので、マウスモデルはヒトのHSC加齢をモニタリングするのに適している。 特に、C57…