こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

iPS細胞とテラトーマ

自分用の備忘録的な記事です。 <基礎知識(用語解説)> iPS細胞人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)のこと。 体細胞に特定因子(初期化因子)を導入することにより樹立される、ES細胞に類似した多能性幹細胞。山中教授グループの研…

低ナトリウム血症

~低ナトリウム血症のまとめ(備忘録)~ 低Na血症は電解質異常の中で最も頻度が高く、女性・高齢者・入院患者に特に多いとされている(入院患者の15~30%に起こるとされている)。心臓・腎臓・肝臓の異常で起きやすく、細胞外のNaが減少することで細胞外へ水分…

BrdUと細胞周期・細胞増殖

自分用の備忘録のようなものです。間違いがある場合もあるかもしれません。 BrdU=bromodeoxyuridine(ブロモデオキシウリジン) チミジン・アナログであり、細胞周期S期において新たに合成されるDNAに取り込まれ、分裂細胞とその娘細胞を標識することができる…

【文献紹介】安楽死やphysician-assisted suicide(PAD)を望むALS患者と望まないALS患者の間の差は?

ALS患者の嘱託殺人が大きなニュースになっていたので、興味を持ち、論文を読んでみました。ごく簡単にですが紹介してみます。 Maessen M, et al. Euthanasia and physician-assisted suicide in amyotrophic lateral sclerosis: a prospective study. J Neur…

【文献紹介】抗エストロゲン療法耐性乳がん患者に対する治療

今回もAbstractだけですが文献紹介です。 Sarmiento-Castro A, Caamaño-Gutiérrez E, Sims AH, et al. Increased Expression of Interleukin-1 Receptor Characterizes Anti-estrogen-Resistant ALDH+ Breast Cancer Stem Cells. Stem Cell Reports. 2020;S2…

【臨床研究】操作変数法

臨床研究に関する講義を聞いたので、その内容の要約です。備忘録的な感じです。 臨床研究は交絡因子との戦い!いかに交絡因子を調整するかがポイント! 交絡因子は既に分かっているものもあれば未知のものもある。 臨床研究において測定されない交絡因子を調…

【文献紹介】小分子PAPD5阻害薬は幹細胞でのテロメラーゼ活性を回復させる

本日もAbstractのみですが簡単に文献紹介をします。 Nagpal N, Wang J, Zeng J, et al. Small-Molecule PAPD5 Inhibitors Restore Telomerase Activity in Patient Stem Cells. Cell Stem Cell. 2020;26(6):896-909.e8. Highlight ・ハイスループットスクリ…

【文献紹介】Wnt活性化と細胞間相互作用の減少によって相乗的に機能的ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大幅な増殖を促進する

Abstractのみですが簡単に文献紹介をします。 Buikema JW, Lee S, Goodyer WR, et al. Wnt Activation and Reduced Cell-Cell Contact Synergistically Induce Massive Expansion of Functional Human iPSC-Derived Cardiomyocytes. Cell Stem Cell. 2020;27…

造血幹細胞についての基礎知識

HSC

造血幹細胞に関して周りからよく聞かれる質問について、自分の知識の整理も踏まえて答えていきます。(一般の方向けを想定) ★造血幹細胞はどんな細胞? ★iPS細胞とはどう違う?, ★造血幹細胞はなぜ重要? ★造血幹細胞移植の概要 ★iPS細胞から造血幹細胞を作れ…

造血幹細胞の体外増殖について

造血幹細胞が生存するにはニッチと呼ばれる微小環境が重要と考えられており、これを体外で再現することが難しいため、造血幹細胞の体外増殖は長らく(30年ほど)困難でした。 しかし近年では研究も進み、体外増殖も実現可能なものとなりつつあります。ブログで…

【臨床研究】RCTvsリアルワールドデータ~大腸穿孔に対するPMXは有効か?~

臨床研究に関する講義を聞いたので、その内容を要約です。備忘録的な感じです。 ★RCT=ランダム化比較試験(randomized control trial) ・臨床研究のゴールドスタンダード。 ・介入群と対照群を無作為に割り付ける方法。 ・あらゆる臨床試験で問題となる交絡…

【文献紹介】iPS由来オルガノイドを利用したSARS-CoV-2ウイルス感染研究モデル

たまたま見つけたCOVID-19関連の文献の紹介です。 Yang L, Han Y, Nilsson-Payant BE, et al. A Human Pluripotent Stem Cell-based Platform to Study SARS-CoV-2 Tropism and Model Virus Infection in Human Cells and Organoids. Cell Stem Cell. 2020;2…

【文献紹介】高齢心不全患者に対するβブロッカー投与は有効か?

ちょっと気になる機会があったので調べてみました。 Steinman MA, Zullo AR, Lee Y, et al. Association of β-Blockers With Functional Outcomes, Death, and Rehospitalization in Older Nursing Home Residents After Acute Myocardial Infarction. JAMA …

【文献紹介】クローン造血と動脈硬化性心血管疾患リスク

Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease Jaiswal S, Natarajan P, Silver AJ, et al. Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2017;377(2):111-121. Clonal Hematopoie…

遺伝子治療:LPLD遺伝子治療後のAAV組み込みは概ねランダムに起こる

再び文献紹介です(Abstractのみですが)。AAVベクターを使ったLPLDの治療が以前読んだ論文に出てきたため、それを読んでみました。 Nat Med. 2013 Jul;19(7):889-91. doi: 10.1038/nm.3230. Epub 2013 Jun 16. A largely random AAV integration profile afte…

Wnt/βカテニンシグナル伝達経路とは

本日も基本的伝達経路の解説を、動画を元にしてみます。 Wnt/βカテニンシグナル伝達経路は、細胞運命決定や胚発生に関与する経路である。 ・Wnt=成長刺激因子 哺乳類では19のWnt遺伝子あり。 ・心臓発生に特に重要。 ・発癌に関与している。 <経路がinactiv…

Notchシグナル伝達経路とは

前回の記事を書いた際に発見した動画が面白かったので他の動画も見てみました。なので、それに関連して勉強したことと共に紹介します。 前回記事↓ teicoplanin.hatenablog.com Notchシグナル伝達経路は、ショウジョウバエから脊椎動物まで幅広い生物が有して…