こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【文献紹介】p53不活性化によりWDR5はヒストンメチル化とは無関係に多能性幹細胞の自己複製能と分化能を調節する

Li Q, Mao F, Zhou B, et al. p53 Integrates Temporal WDR5 Inputs during Neuroectoderm and Mesoderm Differentiation of Mouse Embryonic Stem Cells. Cell Rep. 2020;30(2):465-480.e6. 多能性幹細胞を培養しているとp53変異が起こるが、このイベントが…

【文献紹介】COVID-19への高容量DEXは有効?

NEJMニュースの中から目に付いた記事を。 Does a Higher Dose of Dexamethasone Improve Clinical Outcomes in Patients with Severe COVID-19? 酸素需要のあるCOVID-19患者に対するデキサメタゾン(DEX)の有効性は既に証明されており、定番治療と化している…

【文献紹介】NOTCHと低酸素の組み合わせでHSC増殖効率アップ?

文献紹介。 Araki D, Fu JF, Huntsman H, et al. NOTCH-mediated ex vivo expansion of human hematopoietic stem and progenitor cells by culture under hypoxia.が Stem Cell Reports. 2021 Sep 14;16(9):2336-2350. ※NOTCHに関して NOTCHは過去にも何度…

【文献紹介】運動によって腫瘍関連貧血が改善

目に留まった文献の紹介。 OPEN ACCESS RESEARCH ARTICLEIMMUNOLOGY Share on Remodeling of metabolism and inflammation by exercise ameliorates tumor-associated anemia REGULA FURRER HTTPS://ORCID.ORG/0000-0003-1732-1110ANNAÏSE J. JAUCHCHRISTOPH…

COVID-19ワクチン3回目接種は必要?

COVID-19ワクチン3回目は接種必要? Differential Kinetics of Immune Responses Elicited by Covid-19 Vaccines October 15, 2021DOI: 10.1056/NEJMc2115596 2回目ワクチン接種の7.9-8.8か月後に3回目ワクチンを接種してみる。 この記事によると4つの結論が…

【文献紹介】GPCR脱感作によって好中球遊走が停止する

博士論文締め切りが迫っていることもあり更新が滞っておりました。 今日は抄読会で取り上げた論文の紹介です。 Scienceの論文です。 Neutrophils self-limit swarming to contain bacterial growth in vivo 好中球の移動に関する論文。 本文の前に…なぜ細胞…

【文献紹介】Tet2欠損は白血病発症の最初の段階?

今日はAbstractだけ。 Rajan V, Collett K, Woodside R, et al. Stress hematopoiesis induces a proliferative advantage in TET2 deficiency. Leukemia. 2021 Sep 30. TET2機能喪失は、多くの血液悪性腫瘍において、そして多くの高齢者において生理的に見…

マウスの造血幹細胞の同定の仕方~その2~

昨日の記事の続きのような感じ。 teicoplanin.hatenablog.com マウスHSCを同定する最も優れた方法は、移植後造血再構築能の評価である。 しかしそれは煩雑なので、表面マーカーで代用されることが多い。しかし上記記事でも述べている通り限界も多い。 以下の…

マウスの造血幹細胞の同定の仕方

表題の通り。 マウスの造血幹細胞の定義(どうやって造血幹細胞を同定するか)は諸説ある。 Table 1 Cell surface phenotypes of various hematopoietic stem and progenitor cell populations. Marker Phenotype Cell Type Reference KLS Hematopoietic stem …

YAP1

勉強したことのメモ。 YAP1=yes-associated protein 1 転写因子として機能するタンパク質。細胞増殖を活性化、アポトーシスを抑制する効果がある。YAPやYAP65などとも呼ばれる。 YAPとTAZはHippo経路の下流の主要エフェクターであり、Hippo経路が働くとこの2…

fl/flマウスの実際

fl/flマウスのことを書きました。 teicoplanin.hatenablog.com 今回はfl/flマウスを用いている実際の論文を紹介します。 Lengefeld J, Cheng CW, Maretich P, et al. Cell size is a determinant of stem cell potential during aging. Sci Adv. 2021 Nov 12…

fl/flマウスとは

実験にはよくKO=ノックアウトマウスが使用される。 ある特定の遺伝子Aが欠損した状態だと、癌が発症しやすくなるんじゃないか? みたいな実験の時によく使われます。 しかし、この遺伝子Aが個体発生に必要な遺伝子の場合、欠損させるとすぐに死んでしまいま…

造血細胞CUFアッセイとは

コロニー形成アッセイとは まずコロニー形成アッセイにはいくつか種類があります。 軟寒天コロニー形成試験、細胞毒性試験(コロニー形成阻害試験)などなど。 今回取り上げるのは造血幹細胞の増殖能を調べるコロニー形成アッセイです。 メチルセルロース培地…

【文献紹介】細胞径は加齢課程におけるHSC機能の決定因子である

抄読会で扱った論文の紹介。 とてもユニークな内容。 RESEARCH ARTICLECELL BIOLOGY Share on Cell size is a determinant of stem cell potential during aging JETTE LENGEFELD HTTPS://ORCID.ORG/0000-0001-6021-7613 CHIA-WEI CHENGPEMA MARETICH HTTPS:…

【文献紹介】ショウジョウバエ脳における免疫機構

以前、血液脳関門(BBB)に関する記事を書いた。 teicoplanin.hatenablog.com 細菌やウイルスやリンパ球は、後肢の重力刺激がかかる場所である第5腰椎の背側の血管から脳脊髄液内へ侵入するという内容。 今回もBBBに関する文献。 Winkler B, Funke D, Benmimou…