文献紹介
いろんな論文の詰め合わせ、備忘録的な意味合いが強いです。 日本人移植非適応新規多発性骨髄腫患者に対してD-VMPはBMPよりPFSとOSを延長させる。安全上の大きな問題はなし。(ALCYONE試験)【日本血液学会2020】 OS NR vs 43.9ヵ月 PFS NR vs 20.4ヵ月 D-VMP…
MGUS(=monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS) 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症 今日の臨床サポートより 血中にM蛋白を認めるが少量で、高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変といった形質細胞腫瘍に関連した臓器障害…
慢性リンパ性白血病(CLL)に対するアカラブルチニブ(商品名:カルケンス)の使用についての文献を3つ取り上げる。 まずアカラブルチニブの概要について。 BTK阻害薬の1つ。他のBTK阻害薬としてイブルチニブ、チラブルチニブなどがある。 B細胞受容体シグナル伝…
レナリドミドは多発性骨髄腫の主要な治療薬の1つ。骨髄異形成症候群やマントル細胞リンパ腫で使用される。 レナリドミド(LEN)の代表的有害事象の1つである皮疹(skin rash)について取り上げる。 皮疹はLEN使用者の最大1/3で見られる。(一般的に22~33%) Grade3…
慢性骨髄性白血病(CML)患者は以前は生涯TKI内服を継続しなければならなかたが、近年ではTKI治療中止が新たな目標となっている。 ※CML患者の平均余命は一般集団に近づいている。 Bower H, et al. Life Expectancy of Patients With Chronic Myeloid Leukemia …
イサツキシマブは、ダラツムマブの次に登場した抗CD38モノクローナル抗体製剤。 造血器悪性腫瘍の腫瘍細胞表面に高頻度に発現するヒトCD38抗原に結合することで、抗悪性腫瘍効果を発揮する。補体依存性細胞傷害(CDC)作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用…
近年頻繁に使われるようになったベネトクラクスを用いたAML治療に関するいろいろをメモ的に集約します。 ベネトクラクスとは BCL-2阻害薬。腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する。 BCL-2は通常は細胞内のミトコンドリアに存在しており、アポトーシス抑制作用が…
2022年より国内承認されびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)の標準治療はR-CHOP療法からPola-R-CHP療法となった。当院でも基本的にDLBCLの方はPola-R-CHP6コース+R2コースで治療している。 しかしLow risk DLBCLの場合は、Pola-R-CHPの方が有意と言うわけ…
びまん性大細胞性リンパ腫(DLBCL)の中枢神経(CNS)再発は、全生存期間(OS)中央値が6か月未満と致死的な合併症。なので予防が大切。 El-Galaly TC, et al. Treatment strategies, outcomes and prognostic factors in 291 patients with secondary CNS involve…
文献紹介。自分用の備忘録的な位置づけです。 BloodのHow I treat CLL patients with ibrutinibまとめです。 Introduction IbrutinibはCLL患者のあらゆるフェーズで有効な薬剤の1つ。 RESONATE試験では、4年間のフォローアップで途中中断患者は12%ほど。多…
Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in Untreated Mantle-Cell Lymphoma 未治療マントル細胞リンパ腫に対するイブルチニブ+ベンダムスチン・リツキシマブ療法 Wang ML, Jurczak W, Jerkeman M, et al. Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in…
抄読会で扱った文献の紹介。 RESEARCH ARTICLE IMMUNOLOGY Share on CD97 promotes spleen dendritic cell homeostasis through the mechanosensing of red blood cells DAN LIU HTTPS://ORCID.ORG/0000-0002-5601-8053, LIHUI DUAN, LAUREN B. RODDA HTTPS:…
造血幹細胞は女性ホルモンエストラジオールの影響を受けるという記事を書きました。 teicoplanin.hatenablog.com その続きのような感じです。 造血幹細胞(HSC)はエストラジオールに暴露されると、細胞周期がまわり、分裂速度があがるそうです。 (ただしHSCの…
Kruta M, Sunshine MJ, Chua BA, et al. Hsf1 promotes hematopoietic stem cell fitness and proteostasis in response to ex vivo culture stress and aging. Cell Stem Cell. 2021 Nov 4;28(11):1950-1965.e6. 造血幹細胞(HSC)は恒常性を維持するために様…
再びCAR-T関連の文献の紹介。 CAR-Tに関しては何度か取り上げてきた。 CAR-T療法の概要は以下の通り。 がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。 ※通常、体外から侵入してきた病原体…
南江堂から送られてくる"NEJM Contents News"の中から目に付いた記事の紹介。 以前、脳梗塞の血管内治療に関する発表をヨーロッパの学会で行ったので目にとまった。日本語アブストラクトを見ながらコメントしてみる。 脳梗塞に対する血管内治療前のアルテプ…
CAR-Tに関して勉強したことのメモ第3弾。 CAR-T療法の概要は以下の通り。 がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。 ※通常、体外から侵入してきた病原体などは樹状細胞などの抗原提…
NEJMニュースの中から目に付いた記事を。 Does a Higher Dose of Dexamethasone Improve Clinical Outcomes in Patients with Severe COVID-19? 酸素需要のあるCOVID-19患者に対するデキサメタゾン(DEX)の有効性は既に証明されており、定番治療と化している…
COVID-19ワクチン3回目は接種必要? Differential Kinetics of Immune Responses Elicited by Covid-19 Vaccines October 15, 2021DOI: 10.1056/NEJMc2115596 2回目ワクチン接種の7.9-8.8か月後に3回目ワクチンを接種してみる。 この記事によると4つの結論が…
博士論文締め切りが迫っていることもあり更新が滞っておりました。 今日は抄読会で取り上げた論文の紹介です。 Scienceの論文です。 Neutrophils self-limit swarming to contain bacterial growth in vivo 好中球の移動に関する論文。 本文の前に…なぜ細胞…
昨日の記事の続きのような感じ。 teicoplanin.hatenablog.com マウスHSCを同定する最も優れた方法は、移植後造血再構築能の評価である。 しかしそれは煩雑なので、表面マーカーで代用されることが多い。しかし上記記事でも述べている通り限界も多い。 以下の…
表題の通り。 マウスの造血幹細胞の定義(どうやって造血幹細胞を同定するか)は諸説ある。 Table 1 Cell surface phenotypes of various hematopoietic stem and progenitor cell populations. Marker Phenotype Cell Type Reference KLS Hematopoietic stem …
勉強したことのメモ。 YAP1=yes-associated protein 1 転写因子として機能するタンパク質。細胞増殖を活性化、アポトーシスを抑制する効果がある。YAPやYAP65などとも呼ばれる。 YAPとTAZはHippo経路の下流の主要エフェクターであり、Hippo経路が働くとこの2…
抄読会で扱った論文の紹介。 とてもユニークな内容。 RESEARCH ARTICLECELL BIOLOGY Share on Cell size is a determinant of stem cell potential during aging JETTE LENGEFELD HTTPS://ORCID.ORG/0000-0001-6021-7613 CHIA-WEI CHENGPEMA MARETICH HTTPS:…
以前、血液脳関門(BBB)に関する記事を書いた。 teicoplanin.hatenablog.com 細菌やウイルスやリンパ球は、後肢の重力刺激がかかる場所である第5腰椎の背側の血管から脳脊髄液内へ侵入するという内容。 今回もBBBに関する文献。 Winkler B, Funke D, Benmimou…
抄読会で扱った文献のメモ。COVID-19も老化細胞除去もいずれもタイムリーなテーマで面白かったです。 Camell CD, Yousefzadeh MJ, Zhu Y, et al. Senolytics reduce coronavirus-related mortality in old mice. Science. 2021 Jul 16;373(6552):eabe4832. S…
前編こちら↓ teicoplanin.hatenablog.com 前回はIntroduction的内容だったので、今回は本文を紹介。 今回はCRISPR/Cas9を用いたノックアウトスクリーニング法を用いている。 1細胞あたり1遺伝子がノックアウトされるようなライブラリーをつくり各遺伝子の機…
"SCIENCE ADVANCES"に掲載されていた"Brain inflammation triggers macrophage invasion across the blood-brain barrier in Drosophila during pupal stages"に興味を持ち、読んでみようと思ったが、その前に血液脳関門=BBBに関する文献をバックグラウンド…
勉強したことのメモ。 今日のテーマは赤血球の免疫。 赤血球は哺乳類循環細胞の大部分を占めており、酸素を運搬するという重要な役割を担っている。しかし免疫には関与していないと考えられていた。 が、今回紹介する論文は赤血球が免疫に関与しているという…
前編はこちら↓ teicoplanin.hatenablog.com Nature日本語版Abstractによると、 がんの転移にNK細胞が大きく関与している。 原発巣ではなく転移巣の腫瘍細胞増殖に主に関与している。 一部がんでは腫瘍浸潤NK細胞が多い人ほど転移が少ない。 NK細胞機能低下や…