本日も文献紹介です。今月のAnnals of Emergency Medicineの記事です。
Demystifying Lactate in the Emergency Department=救急外来におけるラクテートの謎解き(?)という面白いタイトルでしたので、読んでみました。
救急外来でラクテートに助けられる場面は結構ある気がします。そのラクテートに関するレビューです。
読んでみた感想として、特別意外なことは多くはありませんでしたが、知識整理にはちょうど良かったです。直接関係ないですが、乳酸関連では慈恵ICUの乳酸に関する資料がよくまとまっていましたので、こちらも載せておきます。
こちらの慈恵の資料によると、長きに亘って悪者と思われてきた乳酸は、心臓や脳にとってもむしろ栄養源となり得る、といった研究が多く紹介されておりますが、救外というセッティングだからか、乳酸のプラスの影響について今回の文献ではあまり触れられていませんでした。
参考: 乳酸についてのオモシロ文献集
https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161108.pdf
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Demystifying Lactate in the Emergency Department
【Introduction】
・救急外来におけるラクテート(乳酸の共役塩基)はガイドにもなり混乱の元にもなり得る→正しい解釈が必要。
化学
・乳酸は、有機αヒドロキシ酸 CH3CH(OH)COOH
ラクテートの生理的機能
②細胞呼吸が多いエリアでの参加的リン化を助けるの酸化剤となる。
・代謝ストレス下の心臓や脳で取り込み・使用が増加する。
ラクテートの恒常性
・骨格筋の嫌気代謝の最終産物「酸素負債」。
・近年では、好気性環境下でもエネルギー利用、酸化還元反応の鍵となる役割をしていることが分かっている。
・敗血症などのストレス環境下で見られるカテコラミン上昇を伴う炎症誘発サイトカイン環境でラクテート↑
・解糖↑→ピルビン酸↑→ラクテート↑
・平均的ターンオーバー率:20 mmol/kg per day
・低酸素、アシドーシス、肝硬変などの理由で肝クリアランス↓
乳酸の分類
・乳酸アシドーシス pH7.35以下になる乳酸上昇
・高ラクテート血症にはいくつかの定義あり
→多くはpHに関わらずラクテート2 mmol/L以上
・Cohen and Wood分類
A型: 細胞性低酸素あり…ショック、低酸素、重度の貧血、低酸素血症、局所組織潅流低下
【検査】
・採血から検査が遅れるとラクテートが上昇してしまう→15分以内に!
・静脈駆血帯はそれほど変わらず。
・動脈\静脈のでのラクテート値の違いは?
→正常ではほぼ一致、高ラクテート血症時はわずかにずれが生じるが多くは静脈血で代用可(このときはトレンドを見るのが大事)
【敗血症におけるラクテート】
→しかしこれは主なラクテート産生の原因ではないかも?(特に明確なショック徴候のない患者において)
・アドレナリンストレス→好気性解糖促進
これがラクテート産生の主な原因か?
・どこでラクテートは産生されている?
→議論があるも有力候補は肺と骨格筋の2か所。
・内因性カテコラミンが好中球β2受容体を刺激→ラクテート産生↑ 肺にこの受容体が多い
・敗血症時は白血球解糖が起こりラクテート産生↑
・炎症性サイトカイン↑→ない細胞・血液細胞機能不全→臍動脈レベルでの低潅流→ラクテート↑ 微小循環障害の改善に関する研究はこれから。
嫌気性代謝と敗血症の関連
・重症sepsisでも、ショックと高ラクテート血症はかならずしも一緒には起こらない。
・酸素供給が増加したら高ラクテート血症は改善するはず?→裏付けできなかった。
・重症敗血症であっても細胞性低酸素はない場合もある。
・敗血症時に筋のpO2はしばしば上昇が見られ、最も酸素を含有しているはずの肺が一番のラクテート産生源である。
“Occult Hypoperfusion” と“Cryptic Shock”におけるラクテート
・これらは高ラクテート血症が見られるが、ショックのない患者→死亡率高い。
・感染患者ではラクテートレベル上昇は血圧と関係なく28日後死亡率増加と関連。
・ショックになってもならなくても高ラクテート血症であれば死亡率ほぼ同じ。
・4 mmol/L を超える高ラクテート血症
23.2%が感染、20%がけいれん発作、残りが感染とは無関係の原因
・外傷患者では高ラクテートは独立した死亡率上昇因子。
・けいれん時のラクテート
・全身性強直間代発作を有する157人の患者を評価→84.7%がラクテート上昇→1〜2時間以内に多くは改善。
・小児重度喘息発作 105人の小児のうち83%が2.2 mmol / L以上、45%が5 mmol / L以上の高ラクテート血症あり。
【救急外来におけるラクテート値と患者の予後】
・ラクテートは優れた予後予測因子。
・蘇生中のラクテート低下は死亡率低下と関連。
・ラクテートを測定すること自体が死亡率改善と関連しているともいわれる。
・ラクテート改善vs末しょう循環改善→28日死亡率に有意差なし。
【救急外来でのラクテートの使用】