こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

2020-01-01から1年間の記事一覧

BMJクリスマス号2020~おもしろい医学論文~

Merry Christmas! 昨年もBMJクリスマスに関する記事を投稿しました。 teicoplanin.hatenablog.com 今年もいくつかの記事を読んでみます。 1.ホスピタルクラウンの存在によって入院中の小児患者の不安が軽減 2.医者の子供は医者になる? 3.クリスマスの害 …

16歳までの自傷行為の有無はその後のメンタルヘルス、教育レベル、職業などのアウトカム悪化のリスクとなる

簡単ですが、疫学講義で取り扱った論文の紹介です。 Mars B, et al. Clinical and social outcomes of adolescent self harm: population based birth cohort study BMJ. 2014 Oct 21;349:g5954. イギリスにおけるAvon Longitudinal Study of Parents and Ch…

【文献紹介】肥満患者の手術は難しい?

講義で扱った文献の紹介です。 Yasunaga H, et al. Body mass index and outcomes following gastrointestinal cancer surgery in Japan. Br J Surg. 2013 Sep;100(10):1335-43. 米国では軽度肥満患者の術後死亡率が低いことが示されており、「肥満パラドッ…

幹細胞と低酸素

造血幹細胞と低酸素については以前にも記事をかきました。 teicoplanin.hatenablog.com teicoplanin.hatenablog.com 今回はそれに関連した内容。 低酸素は細胞の多能性維持に関与しているとされている。 A hypoxic condition is known to contribute to plur…

【文献紹介】食事制限によって健康的な加齢が達成できるのはSestrinのおかげ

Abstractだけですが文献紹介です。 新しく2021年から創刊される雑誌Nature agingに掲載されている記事です。できたてほやほやまだArticleも2個しかないよう。。。 ArticlePublished: 23 November 2020Sestrin is a key regulator of stem cell function and …

ランダム化比較試験(RCT)に関するTipsいろいろ

自分がうけたレクチャーのメモです。 ランダム化比較試験(RCT) ランダム化の仕方 コンプライアンス プラセボの効果 Intention-to-treat解析(ITT解析) RCTのいろいろ ランダム化比較試験(RCT) 臨床研究の中でも介入研究に属する。(介入研究と観察研究がある。…

造血幹細胞とは

以前、造血幹細胞の基礎知識という記事を書きました。 teicoplanin.hatenablog.com その続きのような内容です。 造血幹細胞とは…幹細胞の1つ。特に成体幹細胞の1つ。 幹細胞にはいくつか種類があり、胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞がその主なもの…

【文献紹介】Ly−HSCは年齢に伴って減少しない?

加齢に伴って造血幹細胞=HSCにどのような変化が起きるかについて記事を書きました。 teicoplanin.hatenablog.com この中でも紹介した通り、HSCは加齢に伴って骨髄系優位な造血をするようになります。 上記記事より抜粋↓ 骨髄系優位の造血となる リンパ球の…

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑬~統計に関するTips~

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。 Population(母集団)とSample(サンプル)の違い 変数の種類 Countinuous variables (連続変数):年齢、慎重、体重 Dichotomo…

造血幹細胞の加齢による変化

試食べたこと、勉強したことのメモです。 造血幹細胞の加齢による変化 造血幹細胞の数が増える 機能が低下する 骨髄系優位の造血となる 炎症とストレス反応に関連する遺伝子がアップレギュレートされる DNA修復・クロマチンサイレンシング・細胞周期に関与す…

造血幹細胞とp53

論文を読んでの覚書です。 造血幹細胞は、白血球や赤血球など全ての血球に分化することができ、これらの細胞を生涯産生し続ける。 幹細胞の特徴である「多分化能」と「自己複製能」を造血幹細胞もまた有している。 多くの造血幹細胞は「静止期」にあり、ほと…

誤分類バイアス

本日は誤分類バイアスについてです。誤分類バイアスは「differential misclassification=差異的誤分類」と「non-differential misclassification=非差異的誤分類」の2つがある。 誤分類=misclassificationが起こるのことを指しているのはどちらも同じ。例え…

【文献紹介】造血幹細胞におけるミトコンドリア活性の違いと細胞運命

本日はabstractのみの文献紹介です。 Mansell E, et al. Mitochondrial Potentiation Ameliorates Age-Related Heterogeneity in Hematopoietic Stem Cell Function. Cell Stem Cell. 2020 Oct 10:S1934-5909(20)30493-8. Introduction 造血幹細胞=HSCは全て…

COVID-19関連の論文ちょっとだけ紹介

最近出たCOVID-19関連の論文2本、概要のみご紹介です。 Purkayastha A, et al. Direct exposure to SARS-CoV-2 and cigarette smoke increases infection severity and alters the stem cell-derived airway repair response. bioRxiv [Preprint]. 2020 Jul …

クローン造血

勉強したことのメモです。 クローン造血は、造血幹細胞の前白血病ドライバー遺伝子における体細胞変異によって獲得される。 この遺伝子変異の中でも、DNA methyltransferase 3 alpha (DNMT3A)とten-eleven translocation 2 (TET2)の変異は、加齢に伴うクロー…

Immortal time bias 不死時間バイアス

勉強したことのメモです。以下の論文にimmortal time biasなるものが出てきました。 Filion KB, et al. Sodium glucose cotransporter 2 inhibitors and risk of major adverse cardiovascular events: multi-database retrospective cohort study. BMJ. 202…

造血幹細胞とTGF−β

勉強したことのメモです。 TGF−βとは トランスフォーミング増殖因子(Transforming growth factor=TGF)は様々な細胞の分化・増殖を制御するサイトカインである。Wikipediaによれば、骨髄・腎臓・血小板などほぼすべての細胞が産生しており、5つのサブタイプ…

サルコペニアの予防・改善策

調べる機会があったので、調べたことや勉強したことなどのまとめとメモです。 Sarcopeniaの予防・改策善 Sarcopeniaとは Sarcopeniaを改善する方法 1.Vit.D 2.メラトニン Sarcopeniaの予防・改策善 Sarcopeniaとは 日本サルコペニア・フレイル学会、サルコペ…

【文献紹介】ハイリスク肝臓がん手術はハイボリュームセンターの方が死亡率が低い

前回に引き続き臨床関連の文献です。これもやはりセミナーで紹介されたものです。 Yasunaga H, et al. Relationship between hospital volume and operative mortality for liver resection: Data from the Japanese Diagnosis Procedure Combination databa…

【文献紹介】心筋梗塞時のDoor-to-balloon time短縮は死亡率減少につながらず

久しぶりに臨床関連の文献紹介です。講義で扱った文献です。 Menees DS, et al. Door-to-balloon time and mortality among patients undergoing primary PCI. N Engl J Med. 2013 Sep 5;369(10):901-9. これまでST上昇型心筋梗塞の際には、患者が病院に到着…

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑫~疫学に関するさまざまな用語の解説~

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。 Prevalence=有病率 疾患を有している割合を示す。A point in timeの測定。疾患以外にも、例えば喫煙や抗血栓薬の内服のよ…

【文献紹介】小胞体関連分解ERADの中心的分子SEL1Lは造血幹細胞をニッチにとどめておく役割がある

文献紹介です。 Xu L, et al. Protein quality control through endoplasmic reticulum-associated degradation maintains haematopoietic stem cell identity and niche interactions. Nat Cell Biol. 2020 Oct;22(10):1162-1169. 【基礎知識】リボソームで…

細胞にウイルスを感染させる方法

ウイルスの作成方法については以前記事を書きました。 teicoplanin.hatenablog.com 今回は作ったウイルスでどのように感染させるかについてです。 と言ってもとても簡単です。 (凍結保存中の場合)ウイルス液を氷上解凍。ゆっくり解凍させるのが大切だと習い…

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑪~さまざまな臨床研究の際のTips~

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。 一部は過去記事と重複。 teicoplanin.hatenablog.com Cross-sectional study・・・横断研究と同じ。One pointのみの評価。Tim…

TET2について

勉強したことのまとめ、メモ的な感じです。 1.DNAメチル化障害と骨髄悪性腫瘍 DNAメチル化は、生物学的に重要な機構の1つである。DNA脱メチル化を担う酵素としてTETファミリーというものが存在しており、5-メチルシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変換させ…

【文献紹介】poly I:Cのマウス骨髄への影響

調べたこと、勉強したことのまとめです。メモのような感じです。 Polyinosinic:polycytidlyic acid (poly I:C)とは 免疫刺激剤。ウイルスRNAを模倣している合成二本鎖RNA。生物実験において、ウイルス感染を模倣し、免疫応答の研究などに用いられる。 poly I…

悪性腫瘍の疫学など【セミナー要約】

セミナーで聞いたことのメモです。 日本人におけるモザイク染色体変化 90歳以上:男性40.7% 女性31.5%→加齢に伴ってほぼ避けられない変化。 英国とのモザイク染色体変化部位の差異:chromosome 12 gain, 13q loss, 13q CN-LOH events(いずれも慢性リンパ性白…

SGLT-2阻害薬と尿路感染症

今回は臨床の話題。調べる機会があったので調べたことを書き残しておきます。 SGLT2阻害薬は、その他の血糖降下薬と比較し、心血管イベントと死亡率を減らすことが報告され、使用量が増えている。Zou CY, et al. Effects of SGLT2 inhibitors on cardiovascu…

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑩~交絡因子の調整について〜

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。 交絡因子の調整について 交絡因子とは?…本来は関係ないのに結果に影響を与える因子。 よく例に出されるのは、飲酒と喫煙…

公衆衛生レクチャーで学んだこと⑨~回帰について〜

公衆衛生に関するレクチャーを受けました。それで新たに学んだこと、よくわからなくて後で調べたことなどをメモ的に書いていきます。 この回は難しかったのできちんとまとめられるか不安ですが・・・がんばってやっていきます。 「回帰」とは?~線形回帰~ ロ…