こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

MGUSのマネージメント

MGUS(=monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)

意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症

 

今日の臨床サポートより

  • 血中にM蛋白を認めるが少量で、高カルシウム血症、腎機能障害、貧血、骨病変といった形質細胞腫瘍に関連した臓器障害がなく、他にM蛋白を産生する疾患が認められないものを意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)と呼ぶ。
  • 年に1%の頻度で多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症、アミロイドーシス、B細胞リンパ腫に進行するリスクがある。

定義に関してはガイドライン参照。

骨髄腫への進展に関しては以下の通り。

  • 血清M蛋白量≧1.5g/dL遊離軽鎖(κ/λ)比が異常の2因子は、MGUSの進行リスク因子である。2因子とも有する、1因子のみ有する、リスク因子なしの3群に分け診断後20年以内に進行するリスクを比較すると、IgM型骨髄腫ではそれぞれ55%、41%、19%、非IgM型MGUSではそれぞれ30%、20%、7%である。
  • M蛋白以外の免疫グロブリン(例えばIgG型MGUSの場合は、血清IgAとIgMが2つとも減少している場合は、正常レベルの患者より進行リスクが2倍高い。
  • MGUS患者の平均生存期間(8.1年)は、同年齢・性別の一般人(11.8年)に比べて短いと報告されている。

 

以下はBloodのHow  I Treatシリーズより。

Go RS, Rajkumar SV.

How I manage monoclonal gammopathy of undetermined significance.

Blood. 2018 Jan 11;131(2):163-173.

 

  • 全患者に骨髄検査を行う必要はなし。低リスク患者のみでOK。
    低リスク患者: IgG型、血清M蛋白1500mg/dL以下、FLC比正常
    ※IgG型かつ血清M蛋白1500mg/dL以下の患者で骨髄形質細胞が10%以上である確率は4.7%、骨病変が見つかる可能性は2.5%と非常に低い。これらの患者が生存期間中に疾患進行する確率は2%ほど。
  • フォロー頻度は明確なエビデンスなく、各国ガイドラインごとに異なっており一致率も低い。概ね3~6カ月ごとだが安定していれば2~3年に一度で可とするガイドラインもある。
  • フォロー期間の推奨もまちまちだが、米国の研究では最初の1年間がMGUS病勢進行するリスクは最も高く(2.1%)、それ以降は徐々に低下するとされている。低リスク患者ではフォロー終了可。

    Ronald S. Go,S. Vincent Rajkumar, How I manage monoclonal gammopathy of undetermined significance, Blood, 2018, Figure 2.

     

  •  M蛋白上昇やFLC上昇が見られる場合も必ずしも病気が進行しているとは限らない。上昇が持続する患者でも疾患進行と関連しエチルは50%ほど。逆にこれらのマーカーの上昇がない場合は疾患は進行していないと判断できる。

  • MGUSは遺伝との関連が示唆されているが、かといって家族歴のある患者に全例MGUSスクリーニングするなどは不要。MGUSと告知されることは悪性腫瘍と告知されるのと同等の精神的苦痛があり、追跡コストも莫大なため発見すればよいというわけではない。