こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

CD抗原

勉強したことのメモ。 主要な表面抗原まとめ。CD分類に関して。 CD1-10 だいたいT細胞表面に発現 CD11-19 だいたい単球、顆粒球、マクロファージなどに発現 ただしCD19はB細胞に発現→CAR-Tの標的として有名 CD20- B細胞を中心に単球・マクロファージなどに発…

新型コロナウイルス感染は老化細胞除去で治療可能か?

抄読会で扱った文献のメモ。COVID-19も老化細胞除去もいずれもタイムリーなテーマで面白かったです。 Camell CD, Yousefzadeh MJ, Zhu Y, et al. Senolytics reduce coronavirus-related mortality in old mice. Science. 2021 Jul 16;373(6552):eabe4832. S…

AGM領域

AGM(aorta-gonad-mesonephros)とは AGM領域 大動脈、生殖巣、中腎が発生する胚領域。中腎とは前腎の後方にできる腎臓であり、発生過程で退化して後腎にとってかわられる。 マウスでは胎生期中期に存在する。 胚性期の造血は2つの段階がある。 ①一次造血:卵…

胚性造血

以下のReviewの内容を少しずつ紹介していくシリーズ。 Review Published: 18 June 2013 Hematopoietic cell differentiation from embryonic and induced pluripotent stem cells Wai Feng Lim, Tomoko Inoue-Yokoo, Keai Sinn Tan, Mei I Lai & Daisuke Sug…

【文献紹介】新分野を拓いた論文:ワトソン&クリック「DNAは二重らせん」

ちょい時代遅れだが2020年1月に、「新分野を拓いたNature 論文10選」というのがNature誌で紹介された。そこで紹介されていた、死ぬほど有名なワトソンとクリックのDNA二重らせんの論文を興味本位で流し読みしてみた。 Published: 25 April 1953 Molecular St…

UM171はヒトHSC体外増殖に役立つ~後編~

前編こちら↓ teicoplanin.hatenablog.com 前回はIntroduction的内容だったので、今回は本文を紹介。 今回はCRISPR/Cas9を用いたノックアウトスクリーニング法を用いている。 1細胞あたり1遺伝子がノックアウトされるようなライブラリーをつくり各遺伝子の機…

UM171はヒトHSC体外増殖に役立つ~前編~

読んでみた論文のまとめ。UM171に関するものです。 今回はIntroductionメインです。 UM171に関しては以前も取り上げました。 造血幹細胞(HSC)の体外培養に必要な因子の1つであり、HSC自己複製アゴニストとして知られている。 最初の報告は2014年にFares et a…

Hsf1

勉強したことのメモ。 Hsf1について。 熱などのストレス条件下に晒されると、細胞内では、分子シャペロンとして機能する熱ショックタンパク質の発現が促され、タンパク質の折り畳みを制御することで、タンパク質の恒常性を維持しようとする機構が働きます。…

Folskolin フォルスコリン

調べたことのメモ。 ウイルス作製に使うフォルスコリンのことが気になったので調べてみた。 フォルスコリン(英: Forskolin)は、インド原産の植物であるコレウス・フォルスコリにより産生されるラブダンジテルペンである。ホルスコリンあるいはコレオノール…

【文献紹介】細菌やウイルスやT細胞はどうやって血液脳関門を通れる?

"SCIENCE ADVANCES"に掲載されていた"Brain inflammation triggers macrophage invasion across the blood-brain barrier in Drosophila during pupal stages"に興味を持ち、読んでみようと思ったが、その前に血液脳関門=BBBに関する文献をバックグラウンド…

うがいのエビデンス

勉強したことのメモです。 うがいもエビデンスるよという話。 うがい週間のある国は実はとても少なく、ほぼ日本だけ。その日本から出た論文。 うがいをしたグループの方がしないグループより風邪にかかる割合が36%減ったと報告。 不思議なことにポピドンヨ…

【文献紹介】赤血球の免疫への関与

勉強したことのメモ。 今日のテーマは赤血球の免疫。 赤血球は哺乳類循環細胞の大部分を占めており、酸素を運搬するという重要な役割を担っている。しかし免疫には関与していないと考えられていた。 が、今回紹介する論文は赤血球が免疫に関与しているという…

【文献紹介】ナチュラルキラー細胞による腫瘍細胞休眠~後編~

前編はこちら↓ teicoplanin.hatenablog.com Nature日本語版Abstractによると、 がんの転移にNK細胞が大きく関与している。 原発巣ではなく転移巣の腫瘍細胞増殖に主に関与している。 一部がんでは腫瘍浸潤NK細胞が多い人ほど転移が少ない。 NK細胞機能低下や…

超遠心機の使い方

自分用の備忘録です。 超遠心機 超遠心機(ちょうえんしんき、英: ultracentrifuge)は超高速回転に最適化された遠心分離機であり、1,000,000 G(約 9,800 km/s2)もの加速度を生み出すことができる[1]。超遠心機には分離用(preparative)と分析用(analyti…

【文献紹介】ナチュラルキラー細胞による腫瘍細胞休眠~前編~

勉強したことのメモ。Natureダイジェストで目に付いた記事を紹介。 腫瘍細胞を休眠へといざなうナチュラルキラー細胞 腫瘍細胞を休眠へといざなうナチュラルキラー細胞 | Nature ダイジェスト | Nature Portfolio ナチュラルキラー細胞は、原発巣から他の場…

CIPE(Conditional Inducible Protein Expression)ベクター

勉強したことのメモ。 CIPE(Conditional Inducible Protein Expression)ベクター 哺乳類生体内におけるタンパク質機能を可逆的に調節する方法の1つ。 これは 哺乳類細胞で発現するとすぐに分解されるタンパク質であるヒトFKBP12タンパク質変異体=destabilizi…

293T細胞

久しぶりに293T細胞を起こし、ウイルス作製の準備です。 ラボが移ってから凍結保存環境が整っていなかったので、細胞培養ができなかったのです。ふと293T細胞について調べてみました。 293細胞はヒト胎児由来腎臓上皮細胞である。 遺伝子導入の効率の良い細…

【文献紹介】T-細胞を適度に休息をとらせるとCAR-T治療の効果がアップする

勉強したことのメモ。 CAR-Tに関してはいくつか記事を書いてきた。 がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。 ※通常、体外から侵入してきた病原体などは樹状細胞などの抗原提示細胞…

CAR-T療法とは~その2~

勉強したことのメモ。CAR-Tに関する概要は昨日の記事の通り。 teicoplanin.hatenablog.com CAR-T療法とは がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。 ※通常、体外から侵入してきた病…

CAR-T療法とは

勉強したことのメモ。最近話題のがん治療法。 簡単に言うとがん患者さんの白血球にがん細胞と戦う能力を負荷して戦ってもらう治療。 がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。 ※通常…

【文献紹介】VEGF補充で健康寿命延長?

過去の記事で取り上げた論文の詳細。 Grunewald M, Kumar S, Sharife H, et al. Counteracting age-related VEGF signaling insufficiency promotes healthy aging and extends life span. Science. 2021 Jul 30;373(6554):eabc8479. まずVEGFに関しては過去…