前回、ウェスタンブロッティングの際の2次抗体について書きました。
ウェスタンブロッティングのトラブルシューティング:非特異バンドが多すぎるとき① - こりんの基礎医学研究日記
***追記(2019/10/1)***
ウェスタンブロッティングに関しては以下記事も書きました。
ウェスタンブロッティングルシューティング:1次抗体と2次抗体を変えてみる。 - こりんの基礎医学研究日記
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それから少し時間が空いてしまいましたが、再びウェスタンブロッティングのことについて書きたいと思います。
ウェスタンブロッティングの際のブロッキングは、プローブの非特異的結合を防ぐために行われます。
ブロッキングをしないと、抗体がタンパク質以外の関係のない場所にも結合してしまうようです。
こちらのサイトの図が分かりやすかったです。
ブロッキング剤はかなりの種類があるようです。
上記の図はこちらのサイト↓より引用しました。
https://www.gelifesciences.co.jp/technologies/ecl/pdf/blocking.pdf
前回のブログで紹介した動画でも、ブロッキング剤の違いによる実験結果の違いは取り上げられていました。
元動画はこちらです↓
私は、先輩に教えてもらいBSAを用いていました。
ケー・エー・シー社のブロックエース粉末というものです。
こちらのサイトにある通り、1袋4gを精製水100mlに溶かして使用します。
一度に100ml全部は使わないので、10mlずつ小分けにし、使用しなかった分は-20℃で保存しておきます。
これを教えてくれた先輩いわく、ブロックエースはかなりブロッキング剤として優秀だとのことでした。
しかしこれでも前回のブログで示した通り、非特異バンドがたくさん出てしまいました。
そこで別の先輩に教えていただいたスキムミルクを使用してみました。
スキムミルクについて、インターネットなどで調べると5%スキムミルクを使用するよう書かれているものが多かったですが、今回は先輩の指示で10%スキムミルクを使用してみました。
スキムミルク粉末3gをMQ30mlに懸濁し使用しました。
ちなみにスキムミルクは保存ができないため、使用するたびに作らなければならないようです。それも割と簡単に作れるので、それほど負担には感じませんでした。
文字が見えにくいですが、
ピンク:スキムミルク
水色:ブロックエース
でブロッキングをしています。
ブロッキング時間は4時間ほどです。
この前の実験ではBSA 1時間でブロッキングしていましたが、それでは非特異バンドが多く出てしまっていたので、この実験のときには4時間ほどブロッキングを行いました。
前回のブログでも示した画像ですが、ピンクの2群のうち片方(真ん中の3列)は別の2次抗体を使用しています。その影響か真ん中の3列は非特異抗体が多いですが、両脇の3列は、いずれもあまり非特異抗体は多くないように見えます。
というわけで私の実験ではスキムミルクとBSAの違いはそれほどは感じませんでした。
いろいろと調べると、それぞれのブロッキング剤には一長一短あるようで、それぞれの実験に応じて適したものを選ぶ必要があるようです。
最後に文献を調べてみました。
N Am J Med Sci. 2012 Sep; 4(9): 429–434.
Western Blot: Technique, Theory, and Trouble Shooting
Tahrin Mahmood and Ping-Chang Yang
ブロッキングに関しては次のように書かれています。
Blocking and antibody incubation
Block the membrane with 5% skim milk in TBST* for 1 hour.
Add primary antibody in 5% bovine serum albumin ( BSA) and incubate overnight in 4°C on a shaker [Figure 9].
また、"Blocking is a very important step of western blotting, as it prevents antibodies from binding to the membrane nonspecifically."とも紹介されています。
その他、ブロッキング剤の選び方について書かれている部分を簡単に和訳すると、以下の通りです。
・スキムミルクは安価で入手が簡単なのでしばしば用いられる。
・しかし、全ての検出ラベルとcompatibleなわけではない。
・ミルクはカゼインを含んでおり、これ自体がリンタンパク質とビオチンなので、それらを含むものAP抗体標識を用いるときはブロッキング剤にBSAを使用する方がよい。
・BSAを使用すると抗体を再利用できる。
とあります。
適切なブロッキング剤を選ぶのはなかなか難しいようです。ブロッキング剤に限らないことですが、実験には試行錯誤が重要なようです。