こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

臨床

【文献紹介】未熟児の低酸素は網膜症を減少させるが死亡率を増加させる

大学の講義で読んだ論文のメモです。 ORIGINAL ARTICLE Target Ranges of Oxygen Saturation in Extremely Preterm Infants List of authors. SUPPORT Study Group of the Eunice Kennedy Shriver NICHD Neonatal Research Network* May 27, 2010N Engl J Me…

【文献紹介】COVID-19入院患者に対するデキサメタゾン

ORIGINAL ARTICLE Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 List of authors. The RECOVERY Collaborative Group * February 25, 2021N Engl J Med 2021; 384:693-704 COVID-19入院患者を対象としたopen-label trial(非盲検試験) デキサメタゾ…

歩いてきたSAHは診断が遅れるかも?

調べたこと、勉強したことのメモです。 "walk-in SAH"というものがありますが、これは海外でも使われているのでしょうか。PubMedで検索しても出てきませんが…。 SAH(くも膜下出血)の患者さんの中でも歩いてくる患者さんに関する文献の紹介です。 どちらも日…

パイロットと客室乗務員は放射線暴露によって死亡率が上がる?

授業の課題で扱った文献の紹介です。 Paridou A, Velonakis E, Langner I, Zeeb H, Blettner M, Tzonou A. Mortality among pilots and cabin crew in Greece, 1960-1997. Int J Epidemiol. 2003 Apr;32(2):244-7. パイロットや客室乗務員は宇宙由来の放射線…

経胎盤造血幹細胞移植

調べる機会があったので、調べた内容を紹介します。 最初に報告されたのは、Rogerらが1979年の論文のようです。 Fleischman RA, Mintz B. Prevention of genetic anemias in mice by microinjection of normal hematopoietic stem cells into the fetal plac…

【文献紹介】ミトコンドリア膜電位の増強によって造血幹細胞は若返る

前回abstractのみ取り上げた記事の続きです。だいぶ間が空いてしまいましたが。。。 Mansell E, et al. Mitochondrial Potentiation Ameliorates Age-Related Heterogeneity in Hematopoietic Stem Cell Function. Cell Stem Cell. 2020 Oct 10:S1934-5909(2…

【文献紹介】運動とメトホルミンは糖尿病予防に効果的

調べる機会があったので、糖尿病に関する文献紹介です。 非常に有名な文献で、引用回数はなんと21254回(2万回以上!)です。 日本語Abstract www.nejm.jp Knowler WC, Barrett-Connor E, Fowler SE, Hamman RF, Lachin JM, Walker EA, Nathan DM; Diabetes Pr…

睡眠時血圧は心血管疾患発症に関与

調べる機会があったので調べたことのメモです。 Hermida RC, et al. Asleep blood pressure: significant prognostic marker of vascular risk and therapeutic target for prevention. Eur Heart J. 2018 Dec 14;39(47):4159-4171. 睡眠時血圧(Asleep blood…

救急外来におけるunscheduled return visits=予定外再診者

調べる機会があったので、勉強したことのメモです。 予定外に救急外来再診する患者、つまり一度帰したのにまた来てしまう患者はハイリスクなので注意しましょうといった内容です。 救急外来におけるunscheduled return visits=予定外再診者について 救急外来…

SAH診断に関するTips

調べる機会があったのでそのメモです。 SAH=くも膜下出血の診断 死亡率は画像診断が発達した現代でも生存状態で病院に到着した患者の動脈瘤性SAHの急性希望率は30%ほどに達する。Robert J Singer, et al. Acquired pure red cell aplasia in adults. Post TW…

化膿性脊椎炎に関するあれこれ

調べる機会があったので、自分用のメモ的な感じで共有いたします。 化膿性脊椎炎 症状が非特異的であるため診断の遅れにしばしばつながる。 年間10万人あたり2.4人に発生。(1) 男性では女性の約2倍の発症率。(1) 起因菌MSSA(48%)が最多であり、その次にE.col…

DPP4阻害薬で造血幹細胞移植後のGVHDを予防

NEJM最新号に、糖尿病の治療薬であるDPP4阻害薬で造血幹細胞移植後のGVHDを予防できるという趣旨の文献が掲載されました。これについて見ていきたいと思います。 基礎知識 DPP-4阻害薬の血球への効果に関する基礎医学論文 DPP-4阻害薬でストレス後の血球回復…

ドップラーエコーから音楽が?

なんとなく目に留まった面白い記事を紹介します。 IMAGES IN CLINICAL MEDICINE Hearing Music while Checking a Pulse List of authors. Leanna Wise, M.D. https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1911324 New England Journal of Medicineの記事で…

自分が出したCase reportにLetterが来た話~JounalへのLetterの書き方・返し方など~

以前、フルニエ壊疽に関するCase reportを投稿しました。 これに対して、なんとニューヨーク在住の医師からLetterが来ました。 Case reportはこれまで何度も投稿しておりましたが、Letterが来たのは初めてでした。このように世界の医師が私の論文に目を留め…

16歳までの自傷行為の有無はその後のメンタルヘルス、教育レベル、職業などのアウトカム悪化のリスクとなる

簡単ですが、疫学講義で取り扱った論文の紹介です。 Mars B, et al. Clinical and social outcomes of adolescent self harm: population based birth cohort study BMJ. 2014 Oct 21;349:g5954. イギリスにおけるAvon Longitudinal Study of Parents and Ch…

【文献紹介】肥満患者の手術は難しい?

講義で扱った文献の紹介です。 Yasunaga H, et al. Body mass index and outcomes following gastrointestinal cancer surgery in Japan. Br J Surg. 2013 Sep;100(10):1335-43. 米国では軽度肥満患者の術後死亡率が低いことが示されており、「肥満パラドッ…

COVID-19関連の論文ちょっとだけ紹介

最近出たCOVID-19関連の論文2本、概要のみご紹介です。 Purkayastha A, et al. Direct exposure to SARS-CoV-2 and cigarette smoke increases infection severity and alters the stem cell-derived airway repair response. bioRxiv [Preprint]. 2020 Jul …

サルコペニアの予防・改善策

調べる機会があったので、調べたことや勉強したことなどのまとめとメモです。 Sarcopeniaの予防・改策善 Sarcopeniaとは Sarcopeniaを改善する方法 1.Vit.D 2.メラトニン Sarcopeniaの予防・改策善 Sarcopeniaとは 日本サルコペニア・フレイル学会、サルコペ…

【文献紹介】ハイリスク肝臓がん手術はハイボリュームセンターの方が死亡率が低い

前回に引き続き臨床関連の文献です。これもやはりセミナーで紹介されたものです。 Yasunaga H, et al. Relationship between hospital volume and operative mortality for liver resection: Data from the Japanese Diagnosis Procedure Combination databa…

【文献紹介】心筋梗塞時のDoor-to-balloon time短縮は死亡率減少につながらず

久しぶりに臨床関連の文献紹介です。講義で扱った文献です。 Menees DS, et al. Door-to-balloon time and mortality among patients undergoing primary PCI. N Engl J Med. 2013 Sep 5;369(10):901-9. これまでST上昇型心筋梗塞の際には、患者が病院に到着…

SGLT-2阻害薬と尿路感染症

今回は臨床の話題。調べる機会があったので調べたことを書き残しておきます。 SGLT2阻害薬は、その他の血糖降下薬と比較し、心血管イベントと死亡率を減らすことが報告され、使用量が増えている。Zou CY, et al. Effects of SGLT2 inhibitors on cardiovascu…

COVID-19に関する概説

COVID-19に関するレクチャーを聞いたのでそのまとめ。 【臨床像】 【治療】 【感染対策】 ・SARS-CoV-2・日本では10/29時点で致命率1.8% 【臨床像】 ・潜伏期間5.2日;受診まで4-5日:入院まで9-10日・発熱、咳嗽、倦怠感、食思不振が頻度の高い症状上位4位…

【セミナー要約】肺がんの治療

肺がんの治療に関するセミナーを聞いたので、その要約です。 【治療法選択】・根治が望めるのはⅢ期まで(Ⅲ期で20%ほど)。・手術はⅠ-Ⅲ期まで行う。・根治目的の放射線治療はⅢ期に。・薬物治療はⅡ期以降+再発例に行う。 【肺癌薬物治療】①細胞障害性抗がん剤プ…

自分が書いた症例報告のレビューと論文投稿に関するTips~AITL&IVL~

以前に書いた症例報告に関する記事が好評なようでしたので、再び同じようなテーマを取り扱ってみます。 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL) 血管内リンパ腫(IVL) 今回投稿した雑誌について teicoplanin.hatenablog.com teicoplanin.hatenablog.com 今回は、W…

低ナトリウム血症

~低ナトリウム血症のまとめ(備忘録)~ 低Na血症は電解質異常の中で最も頻度が高く、女性・高齢者・入院患者に特に多いとされている(入院患者の15~30%に起こるとされている)。心臓・腎臓・肝臓の異常で起きやすく、細胞外のNaが減少することで細胞外へ水分…

【文献紹介】安楽死やphysician-assisted suicide(PAD)を望むALS患者と望まないALS患者の間の差は?

ALS患者の嘱託殺人が大きなニュースになっていたので、興味を持ち、論文を読んでみました。ごく簡単にですが紹介してみます。 Maessen M, et al. Euthanasia and physician-assisted suicide in amyotrophic lateral sclerosis: a prospective study. J Neur…

【臨床研究】操作変数法

臨床研究に関する講義を聞いたので、その内容の要約です。備忘録的な感じです。 臨床研究は交絡因子との戦い!いかに交絡因子を調整するかがポイント! 交絡因子は既に分かっているものもあれば未知のものもある。 臨床研究において測定されない交絡因子を調…

【臨床研究】RCTvsリアルワールドデータ~大腸穿孔に対するPMXは有効か?~

臨床研究に関する講義を聞いたので、その内容を要約です。備忘録的な感じです。 ★RCT=ランダム化比較試験(randomized control trial) ・臨床研究のゴールドスタンダード。 ・介入群と対照群を無作為に割り付ける方法。 ・あらゆる臨床試験で問題となる交絡…

【文献紹介】高齢心不全患者に対するβブロッカー投与は有効か?

ちょっと気になる機会があったので調べてみました。 Steinman MA, Zullo AR, Lee Y, et al. Association of β-Blockers With Functional Outcomes, Death, and Rehospitalization in Older Nursing Home Residents After Acute Myocardial Infarction. JAMA …

【Case Reportsを初めて書く若手医師へ】カバーレターテンプレートその2

以前、症例報告投稿の際のカバーレターの文例を紹介しました。今回はその第2弾です。 これまでの記事↓ teicoplanin.hatenablog.com teicoplanin.hatenablog.com **************************************** May 20, 2020 <日付> Richard ******** <編集長…