調べる機会があったので、調べた内容を紹介します。
最初に報告されたのは、Rogerらが1979年の論文のようです。
Fleischman RA, Mintz B.
Prevention of genetic anemias in mice by microinjection of normal hematopoietic stem cells into the fetal placenta.
Proc Natl Acad Sci U S A. 1979;76(11):5736-5740.
- 妊娠13-15日のマウスか胎児肝臓(Donor cell)を取り出し、1-2x10^8/mlに調整し1-2x10^5/μlずつを胎児に移植。
- 妊娠11日のマウスに全身麻酔を施した後に、腹部を切開し、子宮をとり出す。子宮から透見できる胎盤に直径20-30μlの針で1-2x10^5/μl/body(1-2μl)をインジェクション。
上記文献を参考に、実際に移植実験を行っている別の日本語報告もあり。
参考:胎仔期造血幹細胞移植による血液キメラマウスの作製
https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.34/pdf/summary/140_summary.pdf
子宮内治療はヒトでも実際にやられています。初めてヒトで行われたのはbare lymphocyte syndrome(「裸のリンパ球症候群」)とのことです。思ったより昔からやられている印象です。
Touraine JL, et al. In-utero transplantation of stem cells in bare lymphocyte syndrome.
Lancet. 1989 Jun 17;1(8651):1382.
その他では鎌状赤血球症などで今後広がっていくかもしれません。
鎌状赤血球症の子宮内治療
Cortabarria ASV, et al.
In utero Therapy for the Treatment of Sickle Cell Disease: Taking Advantage of the Fetal Immune System.
Front Cell Dev Biol. 2021;8:624477.
- なぜ出生後ではなく胎児期に移植を?
1.胎児は免疫系が未発達であるため、移植に向いている。移植前骨髄破壊の必要がなく、GVHDなどの拒絶反応が起きにくい。
2.妊娠初期は造血幹細胞HSCがダイナミックに移動する唯一の時期。
3.シャントが損時亜するので、ドナー細胞の全身分布がしやすい。
4.体が小さいため移植効率がよい。(妊娠12週ではわずか35g)
5.できるだけ早期に治療した方が症状発症を防ぐことができる。
これを見ると確かにメリットが多い気がします。
実際のどうようにやるか調べてみると、腹部からエコーガイド下にお壊れるようです。
出典:Ailing fetuses to be treated with stem cells
https://www.sciencemag.org/news/2016/04/ailing-fetuses-be-treated-stem-cells