こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

経胎盤造血幹細胞移植

調べる機会があったので、調べた内容を紹介します。

 

最初に報告されたのは、Rogerらが1979年の論文のようです。

 

Fleischman RA, Mintz B.

Prevention of genetic anemias in mice by microinjection of normal hematopoietic stem cells into the fetal placenta. 

Proc Natl Acad Sci U S A. 1979;76(11):5736-5740.

 

  • 妊娠13-15日のマウスか胎児肝臓(Donor cell)を取り出し、1-2x10^8/mlに調整し1-2x10^5/μlずつを胎児に移植。
  • 妊娠11日のマウスに全身麻酔を施した後に、腹部を切開し、子宮をとり出す。子宮から透見できる胎盤に直径20-30μlの針で1-2x10^5/μl/body(1-2μl)をインジェクション。

上記文献を参考に、実際に移植実験を行っている別の日本語報告もあり。

参考:胎仔期造血幹細胞移植による血液キメラマウスの作製

https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.34/pdf/summary/140_summary.pdf

 

子宮内治療はヒトでも実際にやられています。初めてヒトで行われたのはbare lymphocyte syndrome(「裸のリンパ球症候群」)とのことです。思ったより昔からやられている印象です。

Touraine JL, et al. In-utero transplantation of stem cells in bare lymphocyte syndrome.

Lancet. 1989 Jun 17;1(8651):1382.

 

その他では鎌状赤血球症などで今後広がっていくかもしれません。

鎌状赤血球症の子宮内治療

Cortabarria ASV, et al. 

In utero Therapy for the Treatment of Sickle Cell Disease: Taking Advantage of the Fetal Immune System

Front Cell Dev Biol. 2021;8:624477.

  • なぜ出生後ではなく胎児期に移植を?
    1.胎児は免疫系が未発達であるため、移植に向いている。移植前骨髄破壊の必要がなく、GVHDなどの拒絶反応が起きにくい。
    2.妊娠初期は造血幹細胞HSCがダイナミックに移動する唯一の時期。
    3.シャントが損時亜するので、ドナー細胞の全身分布がしやすい。
    4.体が小さいため移植効率がよい。(妊娠12週ではわずか35g)
    5.できるだけ早期に治療した方が症状発症を防ぐことができる。

これを見ると確かにメリットが多い気がします。

 

実際のどうようにやるか調べてみると、腹部からエコーガイド下にお壊れるようです。

 

「In utero Therapy transplantation」の画像検索結果

出典:Ailing fetuses to be treated with stem cells

https://www.sciencemag.org/news/2016/04/ailing-fetuses-be-treated-stem-cells