こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

SGLT-2阻害薬と尿路感染症

今回は臨床の話題。調べる機会があったので調べたことを書き残しておきます。

 

  • SGLT2阻害薬は、その他の血糖降下薬と比較し、心血管イベントと死亡率を減らすことが報告され、使用量が増えている。
    Zou CY, et al. Effects of SGLT2 inhibitors on cardiovascular outcomes and mortality in type 2 diabetes: A meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2019 Dec;98(49):e18245.
    (それまで、糖尿病の存在やHbA1c値が心血管イベント発生に関与していることは示されていたが、経口血糖降下薬などでの治療でこれらのイベントが減るかどうかは明らかでなかった。)
  • SGLT2阻害薬は、尿糖を増加させるため、他の経口血糖降下薬に比べて、尿路感染症やフルニエ壊疽などの合併症を起こしやすいのではないかとの報告あり。
    (そもそも糖尿病自体が尿路感染症のリスクファクターでもある。糖尿患者では細菌性尿路感染症リスクが約60%増加する。)
    Wilding J. SGLT2 inhibitors and urinary tract infections. Nat Rev Endocrinol. 2019 Dec;15(12):687-688.
  • FDA(Food and Drug Administration=アメリカ食品医薬品局)によると、2013-2019年までにSGLT2阻害薬内服糖尿病患者に発生したフルニエ壊疽は55例、1984-2019年までにそれ以外の糖尿病薬内服糖尿病患者に起きたフルニエ壊疽19例より圧倒的に多い。
    Stover KR, et al. Infectious complications of newer agents in the fight against diabetes. Nurse Pract. 2020 Nov;45(11):17-24.
  • 厚生労働省も、2019年5月に、SGLT2阻害薬含有製剤9製品の使用上の注意にの「重大な副作用の項」に「外陰部および会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)」に関する注意の追記をするよう指示。
  • しかし他の経口血糖降下薬と同等との研究もあり。
    傾向スコアマッチングを用いたpopulation base大規模コホート研究:尿路感染症リスクは他の糖尿病薬と同等。
    Dave CV, Schneeweiss S, Kim D, et al. Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Severe Urinary Tract Infections: A Population-Based Cohort Study. Ann Intern Med. 2019 Aug 20;171(4):248-256.