ALS患者の嘱託殺人が大きなニュースになっていたので、興味を持ち、論文を読んでみました。ごく簡単にですが紹介してみます。
Maessen M, et al.
Euthanasia and physician-assisted suicide in amyotrophic lateral sclerosis: a prospective study.
J Neurol. 2014;261(10):1894-1901.
・ALS患者のうつ病の有無、疾患の特徴、QOL、医療ケアの質が安楽死またはphysician-assisted suicide (EAS)に関与するかを調査。
・オランダで行われた前向き研究。様々なステージのALS患者に3か月ごとにアンケートを実施。
・患者の31%がEASを要求、そのうち69%が最終的にEASにて死亡。EASによる死亡者は全患者の22%。
・EASを要求した患者のうち、86%はヘルスケアが優れていると回答。
・45%は尊厳の喪失を感じ、42%は窒息の恐怖を感じていた。
・EASを望む患者とそうでない患者で、医療ケアの質・量、うつ病化どうか、QOLは差がなかった。
【感想/私見】
今回のニュースで「ALS患者がもっと生きやすくなるような社会制度や治療体制などサポートの充実を」などといった意見も見られましたが、上記文献では医療ケアが十分かどうかは安楽死の意向にあまり関連していないようでした。そのほか、病期やうつ病の有無とも関連が薄いというのも少し意外でした。
別の文献をちらっとみると、宗教の有無なども安楽死を望むかに関与してくるようであり、無宗教者の多い日本では少し結果も変わってくるかもしれません。大変難しい問題ですが、議論が進むことを望みます。