大学の講義で読んだ論文のメモです。
Target Ranges of Oxygen Saturation in Extremely Preterm Infants
Abstract
これまでの研究で、未熟児に高濃度酸素投与が行われると未熟児網膜症が起きやすくなるとされてきたが、どの程度の酸素飽和度が最適なのかは十分にわかっていないため、これを調査するため、妊娠24週0日から27週6日の間に生まれた1316人の乳児を対象に2x2のランダム化比較試験を実施。目標SpO2 85〜89% vs 91〜95%のどちらかと、CPAP vs 気管挿管+サーファクタントのどちらか、計4群にランダムに分けられ、網膜症発生率と退院前死亡率をアウトカムとした。
その結果、重度の網膜症発生率または死亡どちらかが発生する確率は低SpO2群と高SpO2群で有意差は見られなかった。退院前死亡率は低SpO2群で有意に高かった。一方で生存者内での重症網膜症の発症率は低SpO2群で低かった。
低SpO2の方が確かに網膜症は起きにくいが、死亡と網膜症合わせた複合転機は有意差はなく、低SpO2にすることによる死亡率の増加は重要な懸念事項である。
本文
Introduction
- 未熟児網膜症は失明やその他の視覚障害につながる。
- 高濃度酸素への暴露がこれを助長すると1950年代にRCTで突き止められてからはFiO2:0.5以下に制限されるなどの対策が取られ、失明は防げるものの死亡率が上昇するのではという懸念がなされていた。
- その他にも酸素中毒は、死亡、気管支肺異形成症、脳室周囲白質軟化症、脳性麻痺などにつながりうる。
- 過去の研究では…SpO2:92%以上を目標としているNICUで3.3%、92%未満を木曜としているNICUでは1.4%、98%以上で5.6%、98%未満で3.1%と報告されている。
- 今回はSpO2レベルとともに酸素投与法でも2群に分け(CPAP vs 気管挿管+サーファクタント)、four armでRCTを実施。
Methods
- Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Developmentで実施。
- 24週0日から25週6日または26週0日から27週6日に出征する乳児を対象とした。
- 目標SpO2 85〜89% vs 91〜95%のどちらかと、CPAP vs 気管挿管+サーファクタントのどちらかの4群にランダム割付。
- サンプルサイズ計算はされており目標1310人→実際は1316人で達成。
- 封筒法を用いたランダム割付、ITT解析。
Results
- Baselineは同等。
- 重度の網膜症発生率または死亡どちらかが発生する確率は低SpO2群と高SpO2群で有意差は見られなかった。(28.3% vs 32.1%)
- 重症網膜症は低SpO2群で有意に少ない。(8.6% vs 17.9%)
- 退院前死亡率は低SpO2群で有意に高い。(16.2% vs 19.9%)
Discussion
- 過去にも同様の研究があったが、SpO2の持続的な経皮モニタリングが可能になって以降のRCTはなし。
- 過去の同様の研究と類似した結果。
- 酸素化の目標が低いほど重症網膜症発生率は有意に低下したが、2人の網膜症が予防されるのに対して1人の死亡が増えるという結果に。
- 早産時の目標SpO2設定は注意が必要。
非常に難しい問題なのですが、網膜症になるか死ぬかだったらまだ網膜症の方がいいのでは?と個人的には思うので高めの酸素濃度目標でもいいのでは…なんとなく思います。すでに10年ほど前の論文ですし、もしかしたらまた新しい見解が出ているかも…。
あとは倫理的な問題について思いついたことをメモ。
- Informed concentは十分にされている。
- 個人情報は十分に保護。
- 脆弱な患者には特別な保護などの配慮あり。
※2021/4/6追記
続きがあります。