自分がうけたレクチャーのメモです。
ランダム化比較試験(RCT)
臨床研究の中でも介入研究に属する。(介入研究と観察研究がある。)
RCTの最大の利点は未知・既知含め交絡因子を排除できること。
臨床研究において測定されない交絡因子を調整できる方法は2つだけ。
1.RCT=ランダム化比較試験(randomized control trial):介入研究
2.操作変数法:観察研究
RCTは交絡因子を調整する最も優れた方法。
操作変数法については別の生地で紹介↓
ランダム化の仕方
コイントスや乱数表を使った方法などがある。しかし特に小規模RCTの場合は、それでも完全にランダムにはできないことも…
→小規模RCTのときに利用される方法として、ブロックランダム化というものがある。
患者を4人、8人組などグループに分け、グループごとに治療を割り振るという方法。AとB2つの治療を比較したいとすると4人組で治療を受ける組み合わせは、
AABB, ABAB, BBAA, BAAB, ABBA, BABA
の6種類あり、これをグループごとに割り振る。
コンプライアンス
患者が割り当てられた治療法などを継続できるかは、特に長期間のフォローアップの場合しばしば問題となる。ちゃんと継続できるか確認するため、Run-in Phaseという試用期間のようなものが採用されることがある。
【Run-in pahseの例】
Stürmer T, et al. Aspirin use and colorectal cancer: post-trial follow-up data from the Physicians' Health Study. Ann Intern Med. 1998 May 1;128(9):713-20
米国の健康な男性医師40-84歳を対象に行われた研究。RCTとコホート研究を組み合わせている。325mg/日のアスピリン内服は大腸がん予防になるかを検証。アスピリン群とプラセボ群で大腸がん発症率を検証したところ、有意な差はなし。(同時に実施したコホート研究でも同じく有意差なし。)
研究にエントリーするにあたり、ランダム化の前の時点で3ヶ月のrun-in phase期間を設け、アスピリン(あるいはプラセボ)服用を続けられるかチェックし、これをクリアした患者のみ選び、ランダム化→その後の試験を実施した。これで約1/3程度が除外された。
【Run-in pahseのメリット・デメリット】
外的妥当性が下がるが、内的妥当性はあがる。
※一般にRCTは、ランダム化の前までの段階のプロセスが外的妥当性、ランダム化後のプロセスが内的妥当性に関与している。
プラセボの効果
患者の研究に対する意識的・無意識的反応を除外する。
ホーソン効果(Hawthorne effect)を除外するためにある。
ホーソン効果(ホーソンこうか、英: Hawthorne effect)とは、治療を受ける者が信頼する治療者(医師など)に期待されていると感じることで、行動の変化を起すなどして、結果的に病気が良くなる(良くなったように感じる、良くなったと治療者に告げる)現象をいう。
出典:Wikipedia
Coronary Drug Project Research Group. Influence of adherence to treatment and response of cholesterol on mortality in the coronary drug project. N Engl J Med. 1980 Oct 30;303(18):1038-41.
クロフィブラートのアドヒアランスが冠動脈疾患の死亡率に関与するかを調べた研究。
アドヒアランスがよい群で有意に死亡率が減少したが、ほぼ同様の効果がプラセボ群でも見られた。
Intention-to-treat解析(ITT解析)
ランダム化後に脱落した患者(途中でフォローできなくなったしまったなど)も解析に含めること。なぜなら脱落者を除外してしまうと、ランダム化した時点の患者集団とは性質が異なってしまう可能性があるから(うまくランダム化されたことにならなくなってしまう)。
しかし二次解析でコンプライアンス良好な患者のみ解析することもあり。
→これによって結果に若干差異がでることもある。
例外的に非劣性試験ではITT解析とするとtype I errorが増す可能性があることから、脱宅者を除外するper-protocol解析が行われる。詳しくはこちら↓
RCTのいろいろ
1.Factorial Designs(要因デザイン)
2種類の治療(薬など)を同時に検証する。AとBの2つの治療薬があったとして、
①Aのみ服用(A+プラセボ)
②Bのみ服用(B+プラセボ)
③どちらも服用する
の4郡に分けて試験を行う方法。単剤の効果のみならず、2剤の相互作用を見ることができるがこれがメリットでもありデメリットでもある。一方の薬効が一方の副作用を打ち消すなどの場合、このような2剤併用の効果を見るのは非常有効。一方で相互作用があるため、同じサンプルサイズの単独の試験とくらべると検出力が落ちてしまう。また、2剤を同時に検証することで時間と費用の節約になるというメリットもある。
2.Cluster-Randomized Trials(クラスターRCT)
個人ごとにランダム化するのではなく、施設ごとなどにランダム化すること。例えば施設①はプランA、施設②はプランB…などのように行う。例えば学校単位などで行われる。教育法Aと教育法Bどちらが優れているか検証したいときなどは、一施設の人にどちらかの教育だけすればいいので手間が省ける。(個人のランダム化だと全ての施設に教育法A, B両方実施しなければならない。)また、同じ施設間で別々の教育法を受けている人がいると、教育法Aを受けた人からBを受けた人にその情報が渡ってしまったりする(contamination)。
しかし一方で個人の評価は不十分になり、クラスター内相関を考慮するため使用する統計手法も個人RCTとは異なる。個人RCTと同じ方法で行ってしまうと件出力が下がってしまう。
3.Crossover RCTs
2種の治療を途中で交換して全員の患者が受ける方法。例えば、治療薬Aとプラセボである一定期間介入を行い、終了後一定期間の休止期間(wash out period)を経て、治療Aとプラセボを交換して介入をまた行うなどの形を指す。慢性疾患に効果的。一方の郡の患者が治療を受けられないという点をクリアしており、倫理的面でメリットがある。しかし長期間効果が持続する治療などでは望ましくなく、持ち越し効果も完全に排除するのが難しい。また治療順番が結果に影響してしまう可能性もある。逆に時間効果・時期効果を検証できるというメリットもある。