こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

造血幹細胞とp53

論文を読んでの覚書です。

 

  • 造血幹細胞は、白血球や赤血球など全ての血球に分化することができ、これらの細胞を生涯産生し続ける。
  • 幹細胞の特徴である「多分化能」と「自己複製能」を造血幹細胞もまた有している。
  • 多くの造血幹細胞は「静止期」にあり、ほとんど分裂していない。
  • しかし何らかの疾患にかかったり、薬剤や放射線などにより造血幹細胞の数が減ってしまったときなどは、休眠していた造血幹細胞が細胞周期に入り始め、受けたストレスに応答して造血幹細胞を増やす方向に働く。
  • この静止期を維持するのに必要な因子として、HoxB4、STAT5、Gfi-1、SMAD4、c- myc、Mefなどの転写因子が分かっている。
  • これに加えて癌抑制遺伝子として有名なp53が造血幹細胞の静止期の維持に関与していると考えられる。
    p53は事実上、全ての細胞において細胞老化、アポトーシス、細胞周期停止を誘導する。
  • 例えば…p53とMefのどちらかまたは両方が欠損しているマウスでは、骨髄中にけるKSL細胞が増加する。(アポトーシスが減少するわけではなく細胞の割合が増加する。)
    ※KSL細胞:造血幹細胞が多く含まれているとされてる細胞郡。細胞表面マーカー(表現型)を元に選別される。
  • 定常状態ではp53やMefは自己複製を抑え、造血幹細胞を静止期に保つ役割をしているのではないか?
  • さらにMef欠損マウスの造血幹細胞は移植後の細胞職能が高く、これはp53の欠損している、していないに関与しない。
  • Mef欠損マウスでは静止期HSCが増加するが、この効果はp53によってさらに増強される。
  • p53の直接的転写標的であるGfi-1とNecdinは、造血幹細胞に対するp53の役割を仲介している可能性がある。
    p53がGfi-1とNecdinを介してHSC静止期を維持している可能性がある。

 

Liu Y, Elf SE, Miyata Y, Sashida G, Liu Y, Huang G, Di Giandomenico S, Lee JM, Deblasio A, Menendez S, Antipin J, Reva B, Koff A, Nimer SD. p53 regulates hematopoietic stem cell quiescence. Cell Stem Cell. 2009 Jan 9;4(1):37-48.

 

van Os R, de Haan G, Dykstra BJ. Hematopoietic stem cell quiescence: yet another role for p53. Cell Stem Cell. 2009 Jan 9;4(1):7-8.