勉強したことのまとめ、メモ的な感じです。
1.DNAメチル化障害と骨髄悪性腫瘍
DNAメチル化は、生物学的に重要な機構の1つである。DNA脱メチル化を担う酵素としてTETファミリーというものが存在しており、5-メチルシトシンを5-ヒドロキシシトシンに変換させることによって脱メチル化に関与しているとされている。
DNAメチル化に異常が生じると、遺伝子発現制御に異常が発生し、腫瘍発生につながるのではないかとされている。
骨髄系腫瘍では、骨髄異形成症候群(MDS)でDNAメチル化が増加しており、急性骨髄性白血病(AML)への進展や予後不良との関連が示唆されている。TETファミリーの中でもTET2の体細胞変異が骨髄系悪性腫瘍で高頻度に認められることが分かった。TET2は脱メチル化に関与しており、loss-of-function(機能喪失変異)により、DNAの脱メチル化が阻害されることになる。これが腫瘍発生につながるのではないかとされている。骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患の10-20%にTET2変異が見られると報告されている。またTET2ノックアウトマウスでは骨髄増殖性疾患に似た表現型を示すと報告されている。また、TET2遺伝子変異をもつ患者はDNA高メチル化を認めるとの報告もある。
参考文献:
山崎淳平「TET2が司るDNA 脱メチル化メカニズムの解明」
https://www.ueharazaidan.or.jp/houkokushu/Vol.33/pdf/report/182_report.pdf
PukiWiki「TET2 mutation」
http://www.ft-patho.net/index.php?TET2%20mutation
2.TET2の造血幹細胞増殖への影響
Tet2-/-マウスではTet2+/+マウスと比較し、著明に随外造血が亢進(20週マウスでは脾腫が出現)。またLSK分画もTET2-/-20週マウスでは 増加。
→Tet2欠損によって、分化が抑制され、随外造血が促進される。
さらなる実験…野生型マウス骨髄(CD45.2)とTet2f/f(CD45.1/45.1マウス骨髄を、放射線照射後マウスに同数移植→4週間後に50:50のキメリズムを確認したのちにTet2欠損を誘導(コンディショナルノックアウトマウスなのでpoly(I:C)注射によってTet2欠損が誘導される)
→Tet2をノックアウトするとCD45.1/45.1Tet2-/-のキメリズムが上昇していく。
poly(I:C)注射後(=Tet2ノックアウト後)23週間では95%がCD45.1/45.1Tet2-/-由来血球に。同様の傾向は下流血球でも見られ、Tet2は成人HSCの自己複製能調節を担っていると考えられる。
また、Tet2欠損によって白血病様の状態が誘発されることがわかった。
→Tet2欠損は自己複製の増加や進行性の骨髄増殖に関連していることを示している。