勉強したことのメモです。以下の論文にimmortal time biasなるものが出てきました。
Filion KB, et al.
Sodium glucose cotransporter 2 inhibitors and risk of major adverse cardiovascular events: multi-database retrospective cohort study.
BMJ. 2020 Sep 23;370:m3342.
文献概要:
- SGLT2阻害薬は幾つかの研究で糖尿病患者の心血管合併症を減少させるとの報告があるが、現存する(論文発表時点で)RCTはSGLT2阻害薬vsプラセボであり、他の経口血糖降下薬と比較して優れているかは定かではない。
- 観察研究で他の経口血糖降下薬と比較した研究はあり、これでも他の経口血糖効果薬よりも優れていると報告されているが、これにはimmortal time biasなど種々の問題があるためさらなる検証が必要である。
- リアルワールドデータを用い大規模後ろ向き観察研究を実施。
- その結果、SGLT2阻害薬の心血管合併症減少効果が確認でき、さらにどの種類のSGLT2阻害薬でも同様の経口が見られた。
These limitations included the presence of immortal time bias in three studies.
※リアルワールドデータ(Real World Data)とは
・日常診療から得られる患者データの総称。
・病院や科で集めているデータベース、電子カルテデータ、レセプト・DPCデータなども含まれる。
・RCTで除外されてしまう高齢者や合併症を有する患者データもとることができ、外的妥当性や実施可能性という点ではRCTより優れている(逆に内的妥当性に関してはRCTより劣る)。
詳しくは別記事で↓
Immortal time bias 不死時間バイアスとは
診断から治療開始までの死亡が起きない期間が存在することによるバイアス。
例えば、手術する群としない群で比較をしようとした時、手術する前になくなってしまった患者は手術しない群に含まれるため、この分手術しない群の生存期間が短くなってしまうなどの問題のことを指す。観察研究で主に問題となる。
上記の研究の例で言うと、例えば何年か別の経口血糖効果薬え治療を受け、その後にSGLT2阻害薬を投与された患者がSGLT2阻害薬内服群に分類されたり、もしくはその他の経口血糖効果薬処方中の期間に心血管疾患で死亡したりするとその患者は非SGLT2阻害薬内服群に分類されるなどすると結果に歪みが生じる可能性があるとのことです。