こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

クローン造血

勉強したことのメモです。

  • クローン造血は、造血幹細胞の前白血病ドライバー遺伝子における体細胞変異によって獲得される。
  • この遺伝子変異の中でも、DNA methyltransferase 3 alpha (DNMT3A)とten-eleven translocation 2 (TET2)の変異は、加齢に伴うクローン造血、細胞減少や異型性を伴わないクローン造血を呈する固体においてしばしばみられる。
  • このような変異が起きると、HSCは競争力を獲得し、ニッチ内でのクローン増殖につながると考えられている。
  • クローン造血は、加齢に伴い蓄積していく体細胞変異と、ニッチの変質(変異クローンに有利なようにニッチの性質が変化する)によって、高齢者に頻繁にみられる。
  • これら変異を持った血球が増殖していくと、やはり変異をもった子孫がどんどん増えていく。
  • クローン造血では一般的にそう血球数の変化を起こさない。しかしこの変異クローン由来の白血球は炎症性変化を有している可能性あり。
  • おおくの研究が、クローン造血によってあらゆる原因の死亡が増加することを示している。
  • クローン造血は血液悪性腫瘍の発生率を上げるとされており、さらにそれだけでなく冠動脈疾患、脳卒中などのリスク増加とも関連しているとされている。
  • マウスの実験では、クローン造血が心血管疾患の原因であるとも示唆されている。
  • Tet2やDnmt3aが変異によって不活性化すると、傷害時の心血管組織の損傷を増強させる可能性があることが示されている。
  • Tet2に関しては、ホモ接合型変異はヘテロ接合型変異より増殖が急速であり、より大きな病的変化を起こすなど容量依存的な関係も報告されている。
  • これまでのクローン造血に関する研究の問題点は…
    マウスへの致死量放射線照射後競合移植によって実験が勧められてきた。
    →心血管への放射線の影響、ニッチへのダメージ、HSC内のごく少数の優位なクローンが増殖することによる系統バイアスなどが問題となる。

Wang Y, et al. Tet2-mediated clonal hematopoiesis in nonconditioned mice accelerates age-associated cardiac dysfunction. JCI Insight. 2020 Mar 26;5(6):e135204.