こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】poly I:Cのマウス骨髄への影響

調べたこと、勉強したことのまとめです。メモのような感じです。

 

Polyinosinic:polycytidlyic acid (poly I:C)とは

免疫刺激剤。ウイルスRNAを模倣している合成二本鎖RNA。生物実験において、ウイルス感染を模倣し、免疫応答の研究などに用いられる。

 

poly I:Cを用いた造血幹細胞に関する実験

Blood (2009) 114 (22): 2504.
Poly I:C Stimulates Sca-1 Expression in Murine Bone Marrow and Increases the Number of Phenotypic Hematopoietic Stem Cells.
Russell Garrett, et al.

  • 10-12週齢C57Bl/6マウスに100mgのpoly I:Cを単回投与(intraperitoneal injection)
  • 22時間後にBrdUを投与、その2時間後に骨髄を取り出し解析。
  • poly I:C注射マウスでは33-41%でBrdUが取り込まれていたのにし対し、コントロール(PBSを注射したマウス)では7-10%でしかBrdUが取り込まれていなかった。
  • IL-7R- CD48- LSK細胞群は145-308%もの増加が見られていた。
  • Sca-1の発現レベルがpoly I:C注射によって劇的に上昇。Sca-1陽性細胞割合も増加し、1細胞あたりのSca-1発現量も増加。これはSca-1陰性骨髄前駆細胞の増殖によるのではないか?

Pietras EM, et al.

Re-entry into quiescence protects hematopoietic stem cells from the killing effect of chronic exposure to type I interferons.

J Exp Med. 2014 Feb 10;211(2):245-62.

  • Ⅰ型INF(INF-I)は表面受容体であるIFNARを活性化させ、転写因子STAT-1とSTAT-2の受容体依存性リン酸化を介してウイルス複製を妨害するサイトカインファミリーである。
  • INF-Iは細胞内病原体やウイルスに対する免疫応答を仲介する。
  • 造血幹細胞は通常では多くが静止期にあるが、サイトカイン刺激などによって急速に細胞周期入り、増殖する場合がある。
  • poly I:CによってINF-Iが誘導され、造血幹細胞は細胞周期に入る可能性もあるが一方で細胞周期に入るのを止める可能性もある。
  • poly I:Cの慢性投与は造血幹細胞の枯渇につながる。
  • 筆者らの実験によれば、IFN-Iによってもたらされる造血幹細胞増殖はin vivoでのみ起こる一時的な反応である。すぐに多くの造血幹細胞が静止期に戻るため、造血幹細胞が枯渇してしまうことはない。