こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

タモキシフェンの白血病に対する作用

勉強したことのメモです。

 

  • タモキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーター (Selective estrogen receptor modulator)=SERMの1つ。
  • 乳がんの治療などに用いられる。
  • 白血病を抑える効果がある可能性が複数の文献で指摘されている。

 

Sánchez-Aguilera A, et al.

Estrogen signaling selectively induces apoptosis of hematopoietic progenitors and myeloid neoplasms without harming steady-state hematopoiesis.

Cell Stem Cell. 2014 Dec 4;15(6):791-804. 

  • タモキシフェンはアポトーシスを誘導することで細胞数を減少させる役割がある。
  • この作用はMPPなどには強く出るが、LT-HSCにはあまり出ない。例えば1週間のタモキシフェン処理でMPPはその個数が7分の1に減少したがタモキシフェンはほぼ減少しなかった。
  • これはアポトーシス細胞が増えているためである。
  • さらにJAK2変異マウスで起きる細胞増殖が抑えられる。
    JAK2変異マウスで白血球や血小板などの血球の増多がみられるが、これがタモキシフェン投与によってキャンセルされる。
  • JAK変異があることによって減少したアポトーシス細胞がタモキシフェン投与によって回復する。
  • タモキシフェン投与は正常の造血は阻害せず。
  • また白血病細胞に対する化学療法の効果を増強させる。(生体内・外両方で)
    例えば、白血病細胞はシタラビンなどの投与でアポトーシスする細胞が増えるが、シタラビンとタモキシフェンを投与するとさらにアポトーシス細胞が増える。