こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】造血幹細胞におけるミトコンドリア活性の違いと細胞運命

本日はabstractのみの文献紹介です。

 

Mansell E, et al.

Mitochondrial Potentiation Ameliorates Age-Related Heterogeneity in Hematopoietic Stem Cell Function.

Cell Stem Cell. 2020 Oct 10:S1934-5909(20)30493-8.

 

Introduction

  • 造血幹細胞=HSCは全ての血液細胞を産生できる。これは通常機能的に定義されるが、細胞表現マーカーに基づいて選別されたHSCでは約40%程度が長期多系統再増殖能を有しているとされている。
  • しかし同じ表現型のHSCも不均一な集団である可能性がある。例えばいくつかの過去の報告によれば、ミトコンドリア活性が異なるHSCでは、細胞運命や細胞周期、分化ポテンシャル、生着能が異なっているのでは、とされている。
  • 伝統的に、これらの研究は、HSCは低ミトコンドリア膜電位(MMP)と低ミトコンドリア質量を示し、これらが幹細胞機能維持につながっていると報告している。
  • しかし近年の研究では、HSCは高いミトコンドリア質量と膜電にを有し、この質量と膜電位が高いほど幹細胞機能が高いとの報告がなされている。
  • 高齢化社会によって加齢によるHSCの影響も注目されている。HSCに関しては表現型で定義されるHSCプールは加齢に伴って増加するが、再増殖能は低下し、クローン性増加や骨髄系統に偏った分化能などを示すようになる。
  • 今回は若齢マウスと高齢マウスの膜電位=MPPを調査。これによって両者を区別できるか?
  • 高齢マウスのHSCは通常MPP低い。しかし一部は高齢マウスHSCでも高いMPPを保持。また低下したMPPも薬剤で増強させることができる。→この効果を検証。