こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

CAR-T療法とは~その3~

CAR-Tに関して勉強したことのメモ第3弾。

 

CAR-T療法の概要は以下の通り。

がん細胞はT細胞などの免疫細胞に攻撃されないように、抗原が細胞外に出ないように(あるいは低発現状態)なっている。

※通常、体外から侵入してきた病原体などは樹状細胞などの抗原提示細胞内に取り込まれ、異物であることを示す抗原提示が主要組織適合抗原(MHC)によって行われることでT細胞から攻撃を受け障害される。

抗原が提示されていなくてもがん細胞を攻撃できるようにT細胞を作り替える治療がCAR-T療法。

詳しくは過去の記事参照。

CAR-T療法とは - こりんの基礎医学研究日記

CAR-T療法とは~その2~ - こりんの基礎医学研究日記

 

CAR-Tには第1世代、第2世代、第3世代とある。

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出典:Wikipathologica「CAR-T細胞療法--キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法」

まず最初に開発されたのは、第1世代CARで、

抗原結合部位として細胞外領域に腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体可変領域の軽鎖(VL)と重鎖からなる一本鎖抗体(scFV)があり、膜貫通領域 transmembrane domain を挟んで細胞内領域にT細胞受容体の ζ 鎖を有する構造となっている。

 

この第1世代CARは、in vivo実験やマウス実験では良好な成績を上げたが、臨床試験では明らかな抗腫瘍効果を示すことができなかった。この原因として第2シグナル不足が考えられた。

 

T細胞は通常免疫応答に際し,T細胞受容体からの特異的刺激(第1シグナル)に加え,抗原提示細胞上の共刺激分子からの非特異的シグナル(第2シグナル)を必要とする。しかし,腫瘍細胞はしばしば共刺激分子の発現も低下させているため,CAR-T 細胞が標的抗原を認識できてもT細胞の活性化が十分に行われず,CAR-T 細胞が免疫不応答に陥ってしまう。

出典:信州医誌,66⑹:425~433,2018「CAR-T 療法の現状と今後の展望」

 

→これを解決すべく、CAR遺伝子にT細胞活性化の第2シグナル、すなわちT細胞共刺激分子である CD27、CD28、4-1BB、OX40などを直接組み込んだ第2世代CARが作られた。これで細胞内シグナル領域としてCD3 ζ 鎖(第1シグナルに関与)と共刺激(第2シグナルに関与)の2つの要素が組み込まれる形となった。

 

さらにその後、CD28と4-1BBもしくはCD28とOX40の組み合わせのような2つの共刺激分子を組み込んだ第3世代CARも開発された。

 

第2、3世代CAR-Tは増殖能、サイトカインさん性能、細胞障害活性が強く、生体内で長期に生存することが分かっており、臨床試験でも成果を上げている。