こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

予後良好DLBCLの化学療法はR-CHOP4コースでOK

2022年より国内承認されびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)の標準治療はR-CHOP療法からPola-R-CHP療法となった。当院でも基本的にDLBCLの方はPola-R-CHP6コース+R2コースで治療している。

 

しかしLow risk DLBCLの場合は、Pola-R-CHPの方が有意と言うわけではなくR-CHOPのみでも差はないのではと今のところ考えられている。で、もっと短くてもいいかもしれないというのがFLYER試験である。

 

2018年のASH、2022年のLancetに発表されている。

The Lancet
Volume 394, Issue 10216, 21 December 2019–3 January 2020, Pages 2271-2281
Journal home page for The Lancet
Articles

Four versus six cycles of CHOP chemotherapy in combination with six applications of rituximab in patients with aggressive B-cell lymphoma with favourable prognosis (FLYER): a randomised, phase 3, non-inferiority trial

  • 他施設非盲検ランダム化試験。(非劣勢試験)
  • CD20-positive B-cell lymphomaの患者。
  • 18~60歳、StageI-II、PS0-1、LDH正常範囲、Bulky massがない患者(腫瘍最大径7.5㎝未満)を対象とした。
  • 21日間を1サイクルとして6サイクルR-CHOPを行う群(6×R-CHOP群)と4サイクルR-CHOPを行った後、2サイクルリツキシマブのみを投与する群(4×R-CHOP+2×R群)に1:1で割付。ITT解析。
  • 精巣リンパ腫、頭蓋顔面、上部頸椎浸潤のある患者、 Burkitt or Burkitt-like lymphomaはCNS予防(MTX IT)行われた。
  • 除外基準:CNS浸潤がある患者、Primary CNS lymphoma患者、心臓・肺・肝臓・腎臓の著明な機能低下、既知の薬剤過敏、血球減少(WBC2500未満、10万未満)、活動性肝炎、HIV感染者、過去の化学療法・放射線治療歴(血液腫瘍以外の悪性腫瘍含む)、妊娠中・授乳中、他の臨床試験への参加、免疫抑制治療、他の悪性腫瘍治療中
  • 592例が登録、588例(4サイクル群293例[年齢中央値 49歳、女性 40%]、6サイクル群295例[47歳、39%])がITT解析の対象となる。
    ※85%がDLBCL
  • 3年PSF:4サイクル群96% vs  6サイクル群94%
    →群間差は3%で。95%CIの下限値は0%であり、非劣性マージン(-5.5%)よりも高く、4サイクル群は6サイクル群対して非劣性。
  • CR:4サイクル群91% vs  6サイクル群92%
    PR:4サイクル群3% vs  6サイクル群4%
    3年EFS:4サイクル群89% vs  6サイクル群89
    5年OS:4サイクル群97% vs  6サイクル群98
  • 有害事象は4サイクル群で少ない。(統計解析なし)
  • 再発率には両群で有意差なし。

低リスクDLBCL患者はR-CHOP4コース+Rit2回追加のみでよさそうと考えられる。

(R-CHOP6回は不要)