こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

UM171はヒトHSC体外増殖に役立つ~後編~

前編こちら↓

teicoplanin.hatenablog.com

 

前回はIntroduction的内容だったので、今回は本文を紹介。

 

今回はCRISPR/Cas9を用いたノックアウトスクリーニング法を用いている。

1細胞あたり1遺伝子がノックアウトされるようなライブラリーをつくり各遺伝子の機能を調べる方法である。

→これを用いKBTBD4がUM171の強力なサプレッサーとして同定された。

さらなる解析でRCOR1がKBTBD4の下流にあり、UM171処理によって活性化することが分かった。

またLSD1阻害はCD201とCD86の発現を増強する効果があるが、これはRCOR1レベル低下でも同じ効果が得られる。

 

ヒトHSCをUM171で処理

RCOR1LSD1HDAC2レベルの低下が確認できる

※MG132と同時処理するとRCOR1、LSD1タンパク質の喪失がなくなる。

その後の実験でUM171KBTBD4を介してCoREST複合体を形成するタンパク質を分解することが分かった。

 

UM171非存在下でヒトHSCをex vivo培養すると…

  • LSD1、RCOR1アップレギュレーション
  • H3K4me2、H3K27acレベルが減少(両者は主要な幹細胞エピジェネティックマークのレギュレーター)

※LSD1:H3K4me1/2脱メチル化酵素

 HDAC1/2:H3K27ac脱アセチル化酵素

UM171存在下で培養するとやはりSD1、RCOR1はアップレギュレーションされるものの、H3K4me2とH3K27acレベル減少はなくなる。

また、これにはCUL3 KBTBD4 リガーゼが活性化が重要であることも示された。

 

要約すると以下のようになる。

 

UM171

→CUL3 KBTBD4 リガーゼが活性化

→CoRESTタンパク質が分解される

→H3K4me2とH3K27acレベルが維持されヒストン脱メチル化・脱アセチル化がおこる

→幹細胞性維持に関する遺伝子がONに

→HSC自己複製を促進