イサツキシマブは、ダラツムマブの次に登場した抗CD38モノクローナル抗体製剤。
造血器悪性腫瘍の腫瘍細胞表面に高頻度に発現するヒトCD38抗原に結合することで、抗悪性腫瘍効果を発揮する。補体依存性細胞傷害(CDC)作用、抗体依存性細胞傷害(ADCC)作用、抗体依存性細胞貧食(ADCP)作用などにより腫瘍の増殖を抑制するとともに、アポトーシス誘導やCD38の細胞外酵素活性阻害作用なども有している。
引用:「【新薬】イサツキシマブ(サークリサ)多発性骨髄腫を治療する2番目の抗CD38抗体製剤」
ダラツムマブが初回治療から使用できるのに対してイサツキシマブは少なくとも2つの標準治療が無効な場合に使用可とされている。
いくつかの臨床試験を紹介。
Isatuximab, carfilzomib, and dexamethasone in relapsed multiple myeloma (IKEMA): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial
Moreau P, et al. Isatuximab, carfilzomib, and dexamethasone in relapsed multiple myeloma (IKEMA): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet. 2021 Jun 19;397(10292):2361-2371.
- 302例の再発難治多発性骨髄腫患者を対象とした前向き無作為化多施設非盲検試験。
※18歳以上で、 1-3ラインの治療歴を有する患者で、血清または尿中のM蛋白質が測定可能である症例。 - IsaKd(179例) vs Kd(123例) → 無増悪生存期間はKd群が中央値19.5か月だったのに対し、Isa群では未到達
→つまり観察期間よりも無増悪生存期間が長いということ。 - HR 0·53 (99% CI 0·32-0·89; one-sided p=0·0007)
- Isa群では有意にInfusion reactionが多かった(46% vs 3%)。しかしその他の有害事象に有意差なし。
- VGPR以上の奏功: Isa群72.6% vs Kd群56.1%
- MRD 陰性完全奏効率: Isa群29.6% vs Kd群 13%
次に日本から発表された論文
Real-world clinical outcomes in patients with multiple myeloma treated with isatuximab after daratumumab treatment
Kikuchi T, et al. Real-world clinical outcomes in patients with multiple myeloma treated with isatuximab after daratumumab treatment. Ann Hematol. 2023 Jun;102(6):1477-1483.
- ダラツムマブ治療が失敗した患者にしばしばイサツキシマブが用いられるが、同じCD38抗体製剤を使用して効果があるのか?を検証。
- ダラツムマブ治療後にイサツキシマブ治療を受けた39症例を解析。
- 最終のダラツムマブ投与からイサツキシマブ投与までの期間中央値は6.3か月。ブリッジング治療として使用された薬剤は、Pom、K、VTD-PACE、Eloを含むレジメンなど。
- 追跡期間の中央値は8.7か月、全体的な奏効率は 46.2%。
- 1 年の全生存率は 53.9%、無増悪生存期間の中央値は5.6か月。
- Dara-Isa間が3カ月未満とPFS増悪と関連している。過去の研究では6ヵ月以上だとコントロール良好である可能性が示唆されている。しかし本研究では3カ月以上空いている患者でもPFSは6.4か月と決し奏功はよくなく、CD38抗体製剤の連続使用はあまり勧められないかもしれない。
- PIs, IMIDs, and Daraの3剤に抵抗性の患者の予後は非常に悪い。このような患者にはIsaも無効かもしれない。CAR-Tなどを検討する可能性がある。
- 同じく高LDHの患者に対する奏功も乏しくあまり推奨されない。