昨日の記事の続きのような感じ。
マウスHSCを同定する最も優れた方法は、移植後造血再構築能の評価である。
しかしそれは煩雑なので、表面マーカーで代用されることが多い。しかし上記記事でも述べている通り限界も多い。
以下の論文では、表面マーカーの限界について言及している。
Camargo FD, Chambers SM, Drew E, McNagny KM, Goodell MA. Hematopoietic stem cells do not engraft with absolute efficiencies. Blood. 2006;107(2):501-507.
ここで用いられているHSC同定方法はSP細胞分画を用いる方法である。
1996年,マウス骨髄細胞をHoechst 33342でDNA染色し,FACSにより骨髄細胞中の造血幹細胞を純化することが可能であることが報告された。Hoechst 33342はDNAのA-T塩基配列に入り込む蛍光色素で,かつ,膜透過性が高いことから生細胞の核DNAを染色できる。
MulliganらはHoechst 33342がUV励起後,通常の450 nm前後の蛍光だけではなく,670 nm前後の蛍光を発することに着目し,両方の蛍光をFACSで2次元展開し,通常の細胞周期assayで見られるG0/G1期の細胞よりもさらに蛍光が弱い部分に非常に特異な
パターンをもつ細胞集団を見つけ,linearな細胞集団からやや横に突出した形でFACSパターン上に示されることからSide Population(SP)と名付けた。このSP細胞分画には造血幹細胞が高頻度に含まれることが多くの研究者により示されている。Cytometry Research 14(2) : 57~62,2004
上図はCamargoらの文献より引用。
よく表面抗原で定義されるHSC集団の不均一性が議論されるんですが、Camargoらの文献では、免疫表現型検査とクローンinvitroアッセイにより均一性を評価した、としています。
表面抗原で定義された均一な集団も実際に移植してみるとキメリズムは35%くらいしかなかったことを示し、表現型と色素流出に基づく非常に均質なHSC集団でさえ、絶対的な効率でマウスを再構成できない、などと示している。