こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

YAP1

勉強したことのメモ。

 

YAP1=yes-associated protein 1

転写因子として機能するタンパク質。細胞増殖を活性化アポトーシスを抑制する効果がある。YAPやYAP65などとも呼ばれる。

YAPとTAZはHippo経路下流の主要エフェクターであり、Hippo経路が働くとこの2つのタンパク質をリン酸化し、両者の活性を抑制する効果がある。

 

ちなみにHippo-YAP/TAZシグナル伝達経路は、細胞の数を制御することで器官のサイズを制御する作用があり、発がんや悪性化にも深く関与すると報告されている。

 

Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路は日本人の書いたレビューがある。日本語解説ページもある。

 

leading.lifesciencedb.jp

 

地球上には多種多様な生物が存在し,その体のサイズはさまざまである.哺乳動物では,体長が数cmのマウスから,約2 mのヒト,数十mのクジラなどが存在する(図1a).イヌでは小型犬と大型犬とで体長(体高)が数倍も異なる(図1b).こうした体のサイズの制御には,成長ホルモンおよびインスリン様成長因子による骨形成が重要な役割を担うことが示されている.また,哺乳動物の器官において,肝臓は0.033×体重0.87,心臓は0.006×体重0.98,脳は0.011×体重0.76の関係にあることが報告されている1).このように,器官のサイズが体のサイズに対し決まった割合に形成あるいは維持されるしくみの存在が示唆される.しかしながら,こうしたしくみがどのような分子機構により担われているかは不明である.一方,器官のサイズは器官を構成する細胞の数および大きさにより決定される.近年,器官のサイズを制御するシグナル伝達経路のひとつとして,細胞の数の制御を担うHippo-YAP/TAZシグナル伝達経路が同定された2)Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路はショウジョウバエからマウス,ヒトにまで保存されており,器官のサイズの制御において中心的な役割を担うことが示されている.また,器官のサイズの制御の破綻によりがんを発症することが示されており,Hippo-YAP/TAZシグナル伝達経路と発がんとの関連が注目されている.