博士論文締め切りが迫っていることもあり更新が滞っておりました。
今日は抄読会で取り上げた論文の紹介です。
Scienceの論文です。
Neutrophils self-limit swarming to contain bacterial growth in vivo
好中球の移動に関する論文。
本文の前に…なぜ細胞の移動 cell migrationが重要か?
Cell migrationを理解すると…
- (HSCのhomingへの理解が深まることで)移植が効率化できる
- 狙った場所へ細胞を移動させる細胞療法に役立つ
- 腫瘍転移が抑制できる
- 慢性炎症疾患の炎症抑制につながる
などの可能性がある。
細胞の移動(遊走)には様々な様式がある。
出典:Wikipedia
今回紹介する文献は好中球の移動に関するもの。
筆者らは好中球自身が分泌するサイトカインによって好中球が集まってくるという論文を発表していた。…では集まってくるのはいいけど、どうやってそれが終わるのか?つまりどうやって炎症は解消されるのか?についての論文が今回のもの。
好中球は集まりすぎても集まらなさ過ぎても困る。
集まりすぎは過剰炎症/慢性炎症につながってしまう。
筆者らはGPCR脱感によっておこるのではないかと仮説を立てた。
- GPCRを脱感作するために必要なキナーゼとしてGRK2が事前実験の結果同定された。
- GRK2ノックアウトマウスでは細胞遊走能が高まる。GRK2阻害剤を用いても同じ結果が得られる。
- In vivoでも同様の結果: 緑膿菌・サルモネラ菌に感染させるとGRL2ノックアウトの方が好中球遊走能は上昇する。…しかし細菌クリアランス能力は低下してしまう。
→なぜか? - さらなる実験の結果、好中球凝集による閉じ込め能力が細菌クリアランスには重要であり、GRK2ノックアウトでこれが障害されているためではないかということが分かった。
【結論】