Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in Untreated Mantle-Cell Lymphoma
未治療マントル細胞リンパ腫に対するイブルチニブ+ベンダムスチン・リツキシマブ療法
Wang ML, Jurczak W, Jerkeman M, et al. Ibrutinib plus Bendamustine and Rituximab in Untreated Mantle-Cell Lymphoma. N Engl J Med. 2022 Jun 30;386(26):2482-2494.
※Ibrutinib:Bruton’s tyrosine kinase inhibitor ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬
BTKはプロテインキナーゼの1つで、B細胞・マクロファージ・マスト細胞などの免疫細胞に存在し、B細胞受容体(BCR)などからの刺激を受けて、B細胞の分化や活性化を制御している。このシグナルを阻害することで、関節リウマチ、B細胞性ホジキンリンパ腫、CLLなどに対して治療効果を得られると期待される。
イブルチニブ以外のBTK阻害薬としてアカラブルチニブ(カルケンス)、ベレキシブル(チラブルチニブ塩酸塩)などがある。
試験概要
・65歳以上の523人の成人 未治療マントル細胞リンパ腫の患者
・年齢中央値71歳(65-87歳)
・イブルチニブ+BR(261人) vs プラセボ+BR(262人)にランダム割付
※BRは6サイクル施行(B 90mg/㎡, R 375mg/㎡) CRまたはPRの患者は8週間ごと12回のR維持を受けた イブルチニブは560㎎/day
・PDとなるか許容しがたい有害事象が生じるまで継続
・約7年間フォローアップ(フォロー期間中央値84.7か月)
・OSは2群で同等
・PFSはイブルチニブ群で有意に改善(80.6か月vs52.9か月 HR, 0.75; 95% confidence interval, 0.59 to 0.96; P=0.01)
・CR率もイブルチニブ群で有意に高い(65.5% vs 57.6%, P=0.06)
・MIPIスコアハイリスク患者、TP53変異患者では有意差なし
・G3-4有害事象は、イブルチニブでやや多い。81.5% vs 77.3%
・除外患者:PS3以上、移植予定患者、CNS浸潤がある患者、6カ月以内に脳梗塞・脳出血・重篤な心疾患がある患者、WfなどのVit.K阻害薬使用者、強力なCYP3A inhibitors使用者
※多い有害事象は肺炎、Af。維持療法期間中も肺炎起きうる。心房細動の発生率は、プラセボ群(6.5%)よりもイブルチニブ群(13.9%)の方が高かった。
※もともとBRはマントル細胞リンパ腫治療によく用いられてきた。PSFもR-CHOPより長い (35.4か月vs22.1か月)。BTK阻害薬単剤治療も既に有効性が証明されていた。初回再発時にしばしば用いられる。
以下参考
MIPIスコアとは?¹⁾²⁾
- MIPIスコアとは、進行期マントル細胞リンパ腫の予後を予測する指標の1つ.
- MIPIスコアは、年齢、Performance Status(EOCG)、血清LDH、白血球数の4つのパラメータに対し各々重みをつけて算出する¹⁾²⁾.
- MIPIスコア= { [年齢] * 0.03535} + 0.6978 (if : ECOG>1) + {1.367 * log₁₀[血清LDH/LDH検査上限値] } + {0.9393 * log₁₀ [白血球数]}
エビデンス
- MIPIスコアから3グループに分類.
- 低リスク群(スコア<5.7)全生存期間(OS)の中央値は到達しなかった¹⁾.
- 中リスク群(5.7≦スコア<6.2)OS中央値は51か月¹⁾.
- 高リスク群(6.2≦スコア)OS中央値は29か月¹⁾.
使用上の注意点
- マントル細胞リンパ腫は比較的まれなリンパ腫であるが、予後は不良で、全生存期間(OS)の中央値はわずか30~43か月である¹⁾.
引用:HOKUTO