こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

造血幹細胞と性別の関係~その2~

造血幹細胞は女性ホルモンエストラジオールの影響を受けるという記事を書きました。

 

teicoplanin.hatenablog.com

 

その続きのような感じです。

造血幹細胞(HSC)はエストラジオールに暴露されると、細胞周期がまわり、分裂速度があがるそうです。

(ただしHSCの数やFrequenciesが増加するわけではないので、HSCの非対称分裂が増加するのではないかとされています。)

 

では、なぜこのようなことが起こるのか?という話になります。これによってどのような生物学的メリットがあるのでしょうか。

 

こちらの論文を参考にしてみました↓

Calvanese V, Lee LK, Mikkola HK. Sex hormone drives blood stem cell reproduction. EMBO J. 2014 Mar 18;33(6):534-5. 

 

上記論文によると

  • 妊娠中はエストラジオール増加→HSC分裂頻度↑→造血促進→妊婦の生理的貧血に対向する作用がある。
  • 胎児が(女児であっても男児であったも)多量のエストロゲンに暴露される→これによって胎児の造血が促進される?

のような説が挙げられていました。とくに後者に関してはまだまだ研究途上のようです。

ちなみにオスマウスにエストラジオールを投与してもHSC自己複製が促進されるらしいです。