Reviweの解説。何回かにわたっていきます。
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Molecular and cellular mechanisms of aging in hematopoietic stem cells and their niches
Journal of Hematology & Oncology 13, Article number: 157 (2020)
今回のテーマは
「高齢マウスにおけるHSCの骨髄バイアス」
について。
- HSCはもともと不均一な集団であることが以前から示唆されていた。
(single cell解析で明らかとなった)
→高齢マウスではこの不均一性は有意に増幅される。 - 高齢になってくるとHSCは骨髄球系への分化がリンパ球系への分化と比して促進されることが分かっている。(リンパ球分化に関与する遺伝的が欠損する)
- Eavesらの研究室はLT-HSC(長期造血再構築能を示すHSC)をα-HSC、β-HSCの2つに分類した。
- α: 骨髄性バイアス(My-bi)HSCであり、リンパ球分化の遺伝的欠損により、リンパ球/骨髄性比が低い。
β: バランスの取れた(Bala)HSCであり、リンパ球と骨髄球の分化比率のバランスが比較的取れている。
→高齢マウスではα-HSCは有意に増加し、β-HSCはわずかに増加する。
(My-bi HSCは有意に拡大し、Bala-HSCはわずかに増加する) - CD150、41、61、Vwfなどいくつかの巨核球-血小板マーカーの発現は老化HSCで増加する。
- 別の研究では、血小板に分化しやすいPlt-bi HSCの存在を報告。
→My-bi HSCの一部と考えられている。Plt-bi HSCも高齢マウスで有意に増加する。 - 移植実験をしてみると、Plt-bi HSCもMy-bi HSCも、一次レシピエントにおいてはBala-HSCよりも成熟血液細胞産生能が低いことが報告されているが、連続移植では自己複製能の高さを発揮し、Bala-HSCを産生するとされている。
→Plt-bi HSCやMy-bi HSCがBala-HSCの上流に位置していることを示唆するがいまだ十分に明らかになっていない。 - 高齢マウスではBala-HSCが3倍に拡大しているのに対し、My-bi / Plt-biHSCは60倍以上に拡大しているとの報告あり。
- また高齢マウスでは機能的に欠陥のある(造血再構築能が短期間しかないなど)HSCが増加すると報告されている。
→まとめると…
HSCは不均一な集団。高齢マウスにおける表現型HSCの増加は、My-bi HSCやPlt-bi HSCの大幅な増加とBala-HSCの微小な増加が組み合わさって起こっている。 - 高齢マウスにおけるMy-bi HSCや機能的に欠陥のあるHSCの起源は?
→対称分裂・非対称分裂の調節が関与していることが示唆されている。