抄読会で扱った論文の紹介です。
García-Prat L, Kaufmann KB, Schneiter F, et al.
TFEB-mediated endolysosomal activity controls human hematopoietic stem cell fate.
Cell Stem Cell. 2021 Oct 7;28(10):1838-1850.e10. doi: 10.1016/j.stem.2021.07.003. Epub 2021 Aug 2. PMID: 34343492.
- 細胞はどれも外来因子を適切に取り込みながら生命活動を維持している。
- 今回取り上げるTFEB 普段は細胞質内でリン酸化された状態
→飢餓などのストレスが加わると脱リン酸化され様々な遺伝子発現に関与する。 - 特にリソソームに関連する遺伝子発現を調節する。
- HSCとリソソームの関連:対象分裂・非対称分裂に関与するのではという報告あり。
他にもマウスHSCにおいてリソソーム活性を阻害するとHSCと休止期に移行させることができるなどの報告あり。(Ghaffari, 2021) - もう1つの今回のキーポイント:MYC
HSCの増幅に関与する可能性が報告されている。 - MYCはリソソーム関連遺伝子やMaster regulatorであるTFEBを制御するとされている。
Results
- 静止期HSC:TFEB↑ MYC↓
活動期HSC:TFEB↓ MYC↑
MYCは同化とリソソーム活性阻害作用によってヒトLT-HSCを活性化する - MYC KOするとリソソーム活性は戻る。これにTFEBが関与している。
- TFEB OE(over expression)HSCを作るとリソソーム系が活性化される。
トランスフェリン受容体↓ LAMP1発現増加(=活性化リソソーム↓) - TFEBとMYCは細胞周期調整にも関与。
TFEB OE→G0増加 分裂期細胞低下 細胞周期低下
TFEB KO→リソソーム活性低下 細胞周期上昇 - TFEB OEのときとMYC OEのときの遺伝子発現量も上記と一致
- TFEBによるendosome-lyssome系の活性化はc-MYCの機能を阻害しLT-HSCを休止期に保つ
- リソソーム活性はLT-HSC分化系譜に影響する(分化の仕方も変える)
- TFEBの機能はLT-HSCとST-HSCで異なる。リソソーム関連遺伝子活性化やリソソーム活性化はLT-HSCでしか見られない。
- TFEBはLT-HSCの自己複製能を制御している。TFEB OEマウスの方が移植後成績がよい。TFEB S142A(TFEB機能をより増強させている)では移植後キメリズムgはさらにUp (一方でTFEB機能喪失マウスでは成績↓)
- TFEB発現量依存的にSelf renewalは制御されているのでは?
- TFEB KOマウスは胎生致死なので、定常状態の解析は不十分。