Bloodに掲載された論文の紹介です。
Kovtonyuk LV, Caiado F, Garcia-Martin S, Manz EM, Helbling P, Takizawa H, Boettcher S, Al-Shahrour F, Nombela-Arrieta C, Slack E, Manz MG.
IL-1 mediates microbiome-induced inflammaging of hematopoietic stem cells in mice.
Blood. 2022 Jan 6;139(1):44-58.
造血幹細胞(HSC)の加齢に伴う変化は過去にもたくさん取り上げてきました。
代表的な変化の1つが、HSCは高齢になるにつれ骨髄球系細胞に分化しやすくなるということです。(リンパ球系細胞に分化する割合が低下する。)
これはMyeloid biasやMyeloid scewingなどと言われる。
今回の論文は、このMyeloid biasが腸内細菌叢由来のIL-1によって引き起こされるのでは?という内容。
まずIntroduction
本文内容を要約して紹介していくと以下の通り。
- 高齢マウスで若齢マウスよりアップレギュレートされるタンパク質と遺伝子を調査。
→IL-1a,bなど4つが抽出される。以降はIL-1に着目し実験を進める。 - 主成分分析(PCA)をWTマウスとIL-1R1 KOマウスで実施すると、高齢マウスでのみWT vs IL-1R1 KOの2つのクラスターができる。
→つまり高齢になることによる変化にIL-1が関与している可能性がある。 - HSCの骨髄細胞分化に関与する遺伝子はWTでは加齢に伴いアップレギュレートされるがIL-1R1 KOマウスではそのような徴候がなくなる。
リンパ球系ではその逆の効果が見られる。 - 常在菌ありWTマウス vs IL-1R1 KOマウス vs 無菌マウスで見てみるとWTマウスで見られる加齢に伴うIL-1分泌上昇が見られない。また加齢に伴う貧血進行、HSC割合増加などの変化も無菌マウスでは見られない。
- IL-1R1 KOマウスや無菌マウスHSCをドナーとして移植を行ってみると?
↑加齢に伴う骨髄球系に偏った分化が見られなくなる。(D)
- IL-1阻害薬や抗生剤をマウスに投与すると似た効果が得られる。
筆者らの実験からわかったことをまとめるとこうなる。
1.加齢に伴い腸管バリア機能が低下し、消化管→循環への腸内細菌叢化合物がより多く移行するようになる。
2.これを契機にIL-1a,bといった炎症性サイトカインの分泌がアップする。
3.(IL-1に暴露されることが1つの契機となり)HSCが骨髄球系に偏った分化をしやすくなる。