こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

CIPE(Conditional Inducible Protein Expression)ベクター

勉強したことのメモ。

CIPE(Conditional Inducible Protein Expression)ベクター

哺乳類生体内におけるタンパク質機能を可逆的に調節する方法の1つ。

これは

哺乳類細胞で発現するとすぐに分解されるタンパク質であるヒトFKBP12タンパク質変異体=destabilizing domain (DD)を利用している。

 

DDは、Wandless教授らが開発した分子量15000-50000前後のタンパク質に人為的に変異を導入し、あえて不安定化させたタンパク質のことである。

 

DDは細胞内で発現するとプロテアソームによって速やかに分解され、この不安定性はDDに融合させたタンパク質にも伝播する。一方で、DDに結合する低分子薬剤を投与すると薬剤がDDに結合し、DDと結合したタンパク質必全体の構造を安定化させ、分解から保護される。

 

参考:

「細胞内での目的のたんぱく質の量をありのままの姿で操る手法」

https://www.tsukuba.ac.jp/journal/images/pdf/p202010012330-2.pdf

 

 

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出典:Funakoshi「Shield-1によるタンパク質発現が制御可能なベクター Conditional Inducible Protein Expression Vector (CIPE)」

上図のように、DD融合タンパク質はShield-1と結合することにより安定化し、細胞内に蓄積する。つまり、Shield-1濃度依存的にタンパク質の発現レベルを制御することが可能となる。

 

Shield-1存在下→目的のタンパク質がOn

Shield-1非存在下→目的のタンパク質がOff

 

これを利用した実験で有名Journalに掲載された文献として以下が挙げられる。

 

Weber EW, Parker KR, Sotillo E, et al.

Transient rest restores functionality in exhausted CAR-T cells through epigenetic remodeling.

Science. 2021 Apr 2;372(6537):eaba1786.