こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

AGM領域

AGM(aorta-gonad-mesonephros)とは

AGM領域 大動脈、生殖巣、中腎が発生する胚領域。中腎とは前腎の後方にできる腎臓であり、発生過程で退化して後腎にとってかわられる。 マウスでは胎生期中期に存在する。

 

胚性期の造血は2つの段階がある。

一次造血:卵黄嚢内にできる血島という場所から血液細胞が作られる。

 →一造血は胚性期~胎児期のみ。

二次造血:成体型の造血を指す。この起源となる造血幹細胞がAGM領域で発生する。成体型造血が最初におこる場所がこのAGM領域と言える。このAGM領域のHSCは後に肝臓に移動し造血を続ける。

 

造血の場所は加齢とともに変化していく。

出生前および出生後の造血部位 (ヒト)

f:id:teicoplanin:20211202222821p:plain

出典:Wikiwand「造血」

この一次造血と二次造血は完全に独立なのではと言われている時期もあった。

つまりHSCが卵黄嚢からAGM領域に移動しているわけではないのでは?と言われていた。

 

しかしその後、これが覆される研究が発表された。

Samokhvalov IM, Samokhvalova NI, Nishikawa S.

Cell tracing shows the contribution of the yolk sac to adult haematopoiesis.

Nature. 2007 Apr 26;446(7139):1056-61.

 

著者らは卵黄嚢に存在するHSCを標識して長期に追跡したところ、卵黄嚢のHSCの一部が、AGM領域や肝臓に移動し、二次造血の元となっていると報告した。(それまでの報告はIn vitro実験で行われたものが主であったのに対して、彼らの実験はIn vivoであった。)