こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

293T細胞

久しぶりに293T細胞を起こし、ウイルス作製の準備です。

ラボが移ってから凍結保存環境が整っていなかったので、細胞培養ができなかったのです。ふと293T細胞について調べてみました。

 

  • 293細胞はヒト胎児由来腎臓上皮細胞である。
  • 遺伝子導入の効率の良い細胞として知られている。
  • タンパク質発現、組換えレトロウイルスの産生に非常によく用いられる。
  • 約36時間で分裂。

個人的にはとても丈夫な細胞で増殖力が強く、扱いやすいイメージです。

下記のサイトに書かれているのですが、オランダの生物学者のAlex Van der Ebによって分離増殖された細胞で、そのポスドクFrank Grahamがヒト胚性腎臓細胞へアデノウイルス5DNAをトランスフェクションしたのが彼の293回目の実験だったためヒト胚性腎臓細胞(Human Embryonic Kidney cell)の頭文字であるHEKと合わせてHEK293と名付けられたとのことです。

 

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初めて知りましたが、HEK293細胞はたくさん種類があるみたいです。

HEK293細胞は種類が多い

HEK293T

HEK293T細胞は、 HEK293細胞にSV40 Large T抗原を発現させたものです。HEK293T細胞の”T”は、T抗原を意味します 。これにより、 HEK293T細胞では、SV40複製起点を持つプラスミドベクターを使えるようになり、大量のタンパク質を生産できるようになりました。

HEK293S

HEK293S細胞は、改変E-MEM(modified minimum Eagle’s medium)に純化させたHEK293細胞です。類似した細胞にHEK293S11があります。

HEK293F

HEK293F細胞は、市販の培地に純化させたHEK293 細胞です。

HEK293FT

HEK293FTは、HEK293T細胞からクローン化された高増殖変異体です。市販の培地に純化させてあります。HEK293FT細胞は、HEK293T細胞と同様に、SV40ラージT抗原を安定的に発現しています。SV40 ラージT抗原の発現は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって制御されています。

HEK293FTM

HEK293FTM細胞は、FRT サイトを含むプラスミドと TetR 発現プラスミドを安定的に発現させたHEK293細胞です。タンパク質-タンパク質相互作用研究のために樹立されました。

HEK293SG

HEK293SG細胞は、エチルメタンスルホン(EMS)で変異を誘導したHEK293Sです。その中からリシン毒素耐性を持つクローンが選抜され、HEK293SG細胞となりました。HEK293SG細胞は、MGAT1遺伝子によってコードされるN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI活性(N-acetylglucosaminyltransferase I activity)が欠損しており、発現するタンパク質はMan5GlcNAc2 N-glycanに優勢的に修飾されます。
N-グリコシル化タンパク質の産生に利用されています。

HEK293SGGD

HEK293SGGD細胞は、HEK293SG Glyco Delete細胞株の略であり、HEK293SG細胞へfungus Trichoderma reesei由来のエンドグリコシダーゼであるendoTのゴルジ体標的型の発現プラスミドをトランスフェクションして得られた細胞株です。HEK293SGGDは主に糖タンパク質の研究に使用されています。

HEK293H

HEK293H細胞は、接着性を高めたHEK293細胞です。HEK293細胞を限界希釈法でクローン化し、選抜されました。プラークアッセイに使用されます。

HEK293E

HEK293E細胞は、Epstein-Barr virus(EBV)nuclear antigen 1(EBNA-1)を発現するHEK293細胞株です。origin of plasmid replication(oriP)を持つベクターを使用することで、タンパク質の大量発現が可能になります。
ラージスケールのタンパク質発現に使用されます。

HEK293MSR

HEK293MSR 細胞は、遺伝子組み換えによってhuman macrophage scavenger receptor(MSR)を発現させたHEK293細胞です。非常に強い接着性を示します。

出典:BIOTIMES -バイオタイムズ-「HEK293細胞とは?HEK293T細胞との違いは?」

https://research-supporters.com/2020/01/19/hek293/