こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

遺伝子治療:LPLD遺伝子治療後のAAV組み込みは概ねランダムに起こる

再び文献紹介です(Abstractのみですが)。AAVベクターを使ったLPLDの治療が以前読んだ論文に出てきたため、それを読んでみました。

 

 2013 Jul;19(7):889-91. doi: 10.1038/nm.3230. Epub 2013 Jun 16.

largely random AAV integration profile after LPLD gene therapy.

 

【要約】

Adeno-associated virus vectors(アデノウイルス随伴ベクター=AAVs)の臨床応用は、ベクターを介した腫瘍形成の懸念があることから限定的である。我々は5リポタンパクリパーゼ(5LPL)欠損患者へのAAV1-LPLS447X筋注後、integration-site analysisを実施した。その結果、ミトコンドリアのランダムな核統合とホットスポットを明らかにした。AAV挿入は潜在的に安全であり、ベクター損傷と挿入はベクターゲノムのそれぞれのポジションで起こると我々は考えている。将来のウイルスintegration-site analysisにはミトコンドリアゲノムを入れる必要があるだろう。

 

※LPLDの一例:原発性カイロミクロン欠損症の概要

www.nanbyou.or.jp

 

※上記サイトの一部抜粋

高カイロミクロン血症とは、血中にカイロミクロンが蓄積する病気です。
カイロミクロンは小腸で作られ、全身の組織に小腸から吸収された食事由来の栄養素(主として「トリグリセリド」やある種のビタミン)を運ぶ働きをしています。「トリグリセリド」とは「中性脂肪」のことで、トリグリセリドという物質には、体内の組織のエネルギーとなる脂肪酸という栄養素が含まれています。カイロミクロンの中に入っているトリグリセリドは血中で分解され、分解産物である脂肪酸が、全身の組織に取り込まれます。このトリグリセリドの分解を行っているのがリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase (LPL))という 酵素 で、LPLの働きがなんらかの原因で妨げられると、カイロミクロンが蓄積し、高カイロミクロン血症となります。
高カイロミクロン血症では、著しい高トリグリセリド血症(通常1,000 mg/dl以上)となり、重大な合併症として急性膵炎があり、時に致死的となりますので、急性膵炎を予防するために、血中のトリグリセリド値をしっかりと下げる必要があります。

出典:難病情報センター 原発性高カイロミクロン血症(指定難病262)