Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease
Jaiswal S, Natarajan P, Silver AJ, et al. Clonal Hematopoiesis and Risk of Atherosclerotic Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2017;377(2):111-121.
日本語Abstract
・加齢はがんや心血管疾患の発生と関連している。
・全エクソンシークエンスによって筆者らは、DNMT3A, TET2, ASXL1の遺伝子変異を有する患者で加齢性障害が生じることを特定した。これらの変異はMDS患者や急性白血病患者でもよく見られる。
・40歳以下ではほぼ見られないが、70歳以上では10%以上でこのような変異あり。
・血液学的異常がなく、このような遺伝子変異をもつ血球が多数増殖している状態を「未確定の潜在能をもつクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」と定義。
・CHIPはあらゆる原因による死亡率が高く、また血液疾患のみならず、冠動脈疾患リスクが高い。
【方法】
4つの症例対照研究の参加者、冠動脈疾患を有する患者4726人と対象群患者3529人の患者のうち、冠動脈疾患患者113人と対象群257人(BioImage)と、冠動脈疾患患者320人と対象群320人(MDC)の2グループの患者に対して全エクソンシークエンスを実施。
【結果】
・BioImage群は、年齢中央値は70歳。冠動脈疾患患者113人中19人(17%)はCHIPキャリアであり、対照群257人中25人(10%)であった(ハザード比1.8; 95%信頼区間[CI]、1.1〜2.9; P = 0.03)。
・MDC群は、年齢中央値60歳。CHIPは、冠動脈性心疾患の参加者320人中21人(7%)と対照320人中12人(4%)で特定されました(ハザード比2.0、95%CI、1.2から3.1、P = 0.003)
・CHIP保因者は非保因者と比較して冠動脈疾患リスク1.9倍。
・冠動脈疾患を発症していない患者の中で、CHIP保因者の冠動脈石灰化のスコアの中央値は、非保因者の3.3倍。
・偶発的な冠動脈疾患のある患者では、スコアはCHIPキャリアでは非キャリアと比較して1.8倍高かった。
・遺伝子変異割合が10%以上のCHIPキャリアは冠動脈石灰化スコアが615以上になるリスクが12倍であった。
・今回同定した遺伝子変異(DNMT3A, TET2, ASXL1)と動脈硬化・冠動脈疾患の関連を調べるため、Tet2ノックアウトマウスを作製し実験。→TET2ノックアウトマウスは動脈硬化が進行しやすい。
【Discussion】
・CHIPを有する患者では冠動脈疾患のリスクが高い。
・これらの変異は、マクロファージの転写出力の変化により、冠動脈イベントのリスクを高める可能性がある。
・マウスにおいては動脈硬化進行と関連していた。
~追記(2020.8.14)~
【文献紹介】ワルファリンは造血と骨髄ニッチを損なう?~その1~ - こりんの基礎医学研究日記
【文献紹介】ワルファリンは造血と骨髄ニッチを阻害する?〜その2〜 - こりんの基礎医学研究日記
上記記事の一部抜粋↓
・Clonal hematopoiesis(クローン造血: 白血病までいかはいかないが正常ではない血球が一定割合増加している状態、動脈硬化性心血管リスクが上がるとされている)とWfは関連づけることができるか?→今回のわれわれの研究では明らかにはならず。(クローン造血が見られる血栓形成率上昇がわずかに上がることが観察されている。)
・心血管疾患を有している患者はWf使用者が多い→Wfがクローン造血の発生や進行に関与している可能性もある。