こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】抗エストロゲン療法耐性乳がん患者に対する治療

今回もAbstractだけですが文献紹介です。

 

Sarmiento-Castro A, Caamaño-Gutiérrez E, Sims AH, et al.

Increased Expression of Interleukin-1 Receptor Characterizes Anti-estrogen-Resistant ALDH+ Breast Cancer Stem Cells.

Stem Cell Reports. 2020;S2213-6711(20)30241-1.

 

・抗エストロゲン耐性ALDH+細胞はER+腫瘍の中でがん幹細胞活性が増加している。

・IL1R1発現ALDH+がん幹細胞分画は抗エストロゲン治療の後に増加する。

・IL1R1発現の有無は抗エスロトロゲン療法が奏功するかの予測因子となり得る。

・ALDH+IL1R1+細胞を標的とした治療によって抗エストロゲン耐性を無効化することができる。

 

Summary

エストロゲン受容体陽性乳がんは抗エストロゲン療法による治療を受けるが、しばしば耐性を示す。高いアルデヒド脱水素酵素活性(ALDH+ cells)を持ったがん幹細胞は、抗エストロゲン治療の後に増加する。今回我々は、高アルデヒド脱水素酵素活性細胞においてIL-1β経路が活性化されていること、抗エストロゲン療法によってIL-1受容体を発現する高アルデヒド脱水素酵素活性細胞を選択することができるということを提示する。重要なことだが、抗エストロゲン耐性モデルにおいてもIL-1受容体1を阻害することでがん幹細胞活性を落とすことが可能である。さらに抗エストロゲン治療を受けた患者の腫瘍ではIL-1受容体1発現が増加し、治療が奏功しないであろうことを予測することが可能である。単一細胞遺伝子発現分析によりALDH+集団内に少なくとも2つのサブグループが存在することが分かった。1つは、活発に増殖しており、もう1つは休止状態にあるのである。抗エストロゲン療法によって休止状態にあるグループは拡大し、治療抵抗性を示す機序の1つであることが示唆される。ALDH+細胞の中でIL-1受容体を発現する細胞抗エストロゲン療法耐性で残存病変を有する患者に対する治療を開発するうえで今後さらに研究する必要がある。