こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】小分子PAPD5阻害薬は幹細胞でのテロメラーゼ活性を回復させる

本日もAbstractのみですが簡単に文献紹介をします。

 

Nagpal N, Wang J, Zeng J, et al.

Small-Molecule PAPD5 Inhibitors Restore Telomerase Activity in Patient Stem Cells. Cell Stem Cell.

2020;26(6):896-909.e8.

 

Highlight

・ハイスループットスクリーニングによって、小分子PAPD5阻害因子BCH001を特定することができた。

・BCH001は、先天性角化不全症患者より得たiPS細胞のテロメア長を回復させる。

・HBsAgサプレッサーであるdihydroquinolizinonesを利用することによって、幹細胞におけるtelomerase RNA component (TERC)を増加させることが可能である。

・経口PAPD5阻害剤はin vivoでヒト造血前駆細胞(HSPC)のTERCとテロメアを回復する。

 

Abstract

テロメラーゼ活性を減弱させるような遺伝子変異が起きると、幹細胞の複製が阻害され、この結果、先天性角化不全症(DC)や肺線維症(PF)などの疾患を引き起こす。全身に存在する幹細胞においてどのようにテロメラーゼが回復するかということはいまだ十分に分かっていない。今回我々は、in vitroにおいて、あるいはin vivo幹細胞モデルにおいてテロメラーゼを回復させる機能を持つ小分子PAPD5阻害薬について示す。PAPD5阻害薬は、telomerase RNA component (TERC)をオリゴアデニル化、不安定化するnon-canonicalなポリメラーゼである。我々は、DC患者から得られたiPS細胞のテロメア活性とテロメア長を回復させる特異的PAPD5阻害因子であるBCH001を同定した。DC由来PARN遺伝子変異を運搬するよう設計された血液幹細胞を免疫不全マウスに異種移植し、その後、経口PAPD5阻害薬にて治療を行うとTERC 3′末端の修復とテロメア長回復が確認できた。今回の発見は、DCやPFをはじめとした華麗関連疾患における幹細胞の磨耗を改善する新たな治療法の開発に役立つ可能性がある。