こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

Wnt/βカテニンシグナル伝達経路とは

本日も基本的伝達経路の解説を、動画を元にしてみます。

 

Wnt/βカテニンシグナル伝達経路は、細胞運命決定や胚発生に関与する経路である。

・Wnt=成長刺激因子 哺乳類では19のWnt遺伝子あり。

・心臓発生に特に重要。

・発癌に関与している。

 

<経路がinactive=活性化していないとき>

・細胞内において、βカテニンはβ TrCPやCKIやAPCなどたくさんのタンパク質と結合しDestruction complexを形成している。

・これらの複合体の作用でβカテニンはリン酸化とユビキチン化を受け、プロテアソームを阻害→これによって細胞内のβカテニンレベルが低く保たれる。

・<核内では>WNT遺伝子転写活性化因子であるTCFがGrouchoによって不活化されている。DNAにTCFが結合するのを防いでいる。

 

<経路がactive=活性化しているとき>

Wntが細胞膜表面の受容体(FrizzledとLRPの2つのパートで構成されている)のFrizzledの部分に結合する

→LRPがそれによってリン酸化される

→細胞内のDestruction complexを細胞表面まで誘導し、受容体の近くまで持ってくる

→Destruction complexを構成しているものの一部であるDvlがLRPに結合

Dvlが活性化

βカテニンのリン酸化やユビキチン化を阻害

→細胞内のβカテニンレベルが上昇

→<核内では>βカテニン濃度上昇によってβカテニンが核内へ入りTCFを阻害しているGrouchoと置き換わる

βカテニンがTCFを結合することによってWNTターゲット遺伝子転写を活性化

→細胞の分化・増殖や、微小管形成を通した細胞流動を誘発

・Destruction complexの構成要素の1つであるAPCに遺伝子変異が起こると、βカテニン上昇が起こらず発がんにつながる可能性がある。

 

<これまでのブログでふれたWnt経路の造血への関与>

・Wntシグナルは、ヒト・マウスともにHSCの維持に重要だが、状況依存的に自己複製能に作用する。

・Wnt経路の主要構成要素のβ-カテニンは自己複製を増強する作用があり。Wnt3a欠損マウスは出生前に死亡してしまう。

・Wnt分泌に不可欠なPorcn因子の欠損やβ-カテニン・γ-カテニン欠損は造血に影響ないとの研究も→この機序は未だ未解明。

・β-カテニン活性化は細胞周期を活性化し、多系統分化を誘導。HSC枯渇にもつながる。

・Wnt非標準経路の主要な因子であるフラミンゴ(Fmi)欠損はHSC頻度低下につながる。

・マウス自己複製に関するWnt/β-カテニン経路はかなり研究が進んでいるがまだDiscussionの余地あり。

・骨芽細胞由来のnon-canonical Wntタンパク質はHSC休止期を維持している。
・ストレス条件下ではcanonical Wnt↑ & non-canonical Wnt↓となり、細胞周期が回り始める→休止期HSCが減る。

 

参考文献:

www.youtube.com

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