本日も基本的伝達経路の解説を、動画を元にしてみます。
Wnt/βカテニンシグナル伝達経路は、細胞運命決定や胚発生に関与する経路である。
・Wnt=成長刺激因子 哺乳類では19のWnt遺伝子あり。
・心臓発生に特に重要。
・発癌に関与している。
<経路がinactive=活性化していないとき>
・細胞内において、βカテニンはβ TrCPやCKIやAPCなどたくさんのタンパク質と結合しDestruction complexを形成している。
・これらの複合体の作用でβカテニンはリン酸化とユビキチン化を受け、プロテアソームを阻害→これによって細胞内のβカテニンレベルが低く保たれる。
・<核内では>WNT遺伝子転写活性化因子であるTCFがGrouchoによって不活化されている。DNAにTCFが結合するのを防いでいる。
<経路がactive=活性化しているとき>
Wntが細胞膜表面の受容体(FrizzledとLRPの2つのパートで構成されている)のFrizzledの部分に結合する
→LRPがそれによってリン酸化される
→細胞内のDestruction complexを細胞表面まで誘導し、受容体の近くまで持ってくる
→Destruction complexを構成しているものの一部であるDvlがLRPに結合
→Dvlが活性化
→βカテニンのリン酸化やユビキチン化を阻害
→細胞内のβカテニンレベルが上昇
→<核内では>βカテニン濃度上昇によってβカテニンが核内へ入りTCFを阻害しているGrouchoと置き換わる
→βカテニンがTCFを結合することによってWNTターゲット遺伝子転写を活性化
→細胞の分化・増殖や、微小管形成を通した細胞流動を誘発
・Destruction complexの構成要素の1つであるAPCに遺伝子変異が起こると、βカテニン上昇が起こらず発がんにつながる可能性がある。
<これまでのブログでふれたWnt経路の造血への関与>
・Wntシグナルは、ヒト・マウスともにHSCの維持に重要だが、状況依存的に自己複製能に作用する。
・Wnt経路の主要構成要素のβ-カテニンは自己複製を増強する作用があり。Wnt3a欠損マウスは出生前に死亡してしまう。
・Wnt分泌に不可欠なPorcn因子の欠損やβ-カテニン・γ-カテニン欠損は造血に影響ないとの研究も→この機序は未だ未解明。
・β-カテニン活性化は細胞周期を活性化し、多系統分化を誘導。HSC枯渇にもつながる。
・Wnt非標準経路の主要な因子であるフラミンゴ(Fmi)欠損はHSC頻度低下につながる。
・マウス自己複製に関するWnt/β-カテニン経路はかなり研究が進んでいるがまだDiscussionの余地あり。
・骨芽細胞由来のnon-canonical Wntタンパク質はHSC休止期を維持している。
・ストレス条件下ではcanonical Wnt↑ & non-canonical Wnt↓となり、細胞周期が回り始める→休止期HSCが減る。
参考文献: