Abstractのみですが簡単に文献紹介をします。
Buikema JW, Lee S, Goodyer WR, et al.
Wnt Activation and Reduced Cell-Cell Contact Synergistically Induce Massive Expansion of Functional Human iPSC-Derived Cardiomyocytes.
Cell Stem Cell. 2020;27(1):50-63.e5.
Highlights
・GSK-3β阻害によって仲介されるヒトiPS細胞由来心筋細胞の増殖は細胞密度に依存する。
・GSK-3β阻害と細胞間相互作用減少によってヒトiPS細胞由来心筋細胞の大幅な増殖につながる。
・LEF/TCF活性はヒトiPS細胞由来心筋細胞の成熟を細胞周期を加速させることなく阻害する。
・心筋細胞を長期増殖しても収縮機能は変化しない。
Abstract
WntやHippoなどの経路の調整によってin vivoにおける心筋細胞の増殖を誘発することができつ。このシグナル伝達調整因子をin vitroにおけるヒトiPS細胞由来心筋細胞体外増殖に利用することが可能である。今回、我々は、CHIR99021を用いてglycogen synthase kinase-3β(GSK-3β)を阻害し、細胞間相互作用を減らすことによって、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大幅な体外増殖(100~250倍)を可能にした。我々は、GSK-3β阻害が、心筋細胞成熟を阻害し、一方で心筋細胞間の相互作用を減少させることによって細胞周期停止を抑制することを発見した。驚くべきことに、単にGSK-3βを阻害するだけでなく細胞間相互作用を減少させることによって10~25倍もの増殖が可能となることがわかった。機序的に継続的に心筋細胞が増殖するには、LEF/TCF活性とAKTリン酸化の2つが必要となるが、 yes-associated protein (YAP)シグナル伝達とは無関係であった。ヒトiPS細胞由来心筋細胞増殖によって得られた人工心臓組織は、増殖していないiPS由来心筋細胞から得られた組織と同等の収縮力を示し、増殖によって細胞機能が衰えないことを示した。つまり、大規模薬剤スクリーニングや組織工学応用に必要なヒトiPS細胞由来心筋細胞の大幅な増殖を可能とする分子機構について我々は明らかにした。