たまたま見つけたCOVID-19関連の文献の紹介です。
Yang L, Han Y, Nilsson-Payant BE, et al.
A Human Pluripotent Stem Cell-based Platform to Study SARS-CoV-2 Tropism and Model Virus Infection in Human Cells and Organoids.
Cell Stem Cell. 2020;27(1):125-136.e7.
・SARS-CoV-2によりCOVID-19パンデミックが引き起こされた。
・呼吸不全がもっとも致死的アウトカムだが、脳や消化管など多臓器に異常は生じうる。心障害も20%に生じ、独立した死亡率上昇因子と考えられている。
・2型糖尿病患者では予後が悪いとの報告あり、またCOVID-19感染によって新規の糖尿病が発祥するとの報告もある。
・まだワクチンや治療法は確立されておらず、早急な研究が必要だが、現在行われている研究はin vivoもin vitroも生体内の環境を十分に再現しているとはいえない。→研究用のヒト疾患モデル開発が急務!
・iPS細胞から作製したオルガノイドをこのヒト疾患モデルとして利用できる可能性がある。
→iPS細胞を用いて3つの胚葉から8種類のオルガノイドを作製(すい臓、肝臓、血管内非細胞、心筋、マクロファージ、ミクロ具リア、皮質神経、ドーパミン作動ニューロン)
→これらのオルガノイドにVZVベースのSARS-CoV-2偽侵入ウイルスを感染させる。
→SARS-CoV-2の推定受容体であるACE2発現プロファイルと相関。
・SARS-CoV-2を感染させると、膵臓内分泌細胞は、強いケモカイン誘導を起こし、またインスリン抵抗性も上昇する。
・肝細胞、胆管細胞オルガノイドでもやはりSARS-CoV-2偽侵入ウイルス感染によって強くケモカイン誘導される。
・ACE2を発現するいくつかの細胞型(皮質神経など)はSARS-CoV-2疑似侵入ウイルスとSARS-CoV-2ウイルスの両方に対して許容度が低いかまったくない。
【Discussion】
・COVID-19感染に伴う呼吸不全はもっとも一般的に見られるが、心臓・神経・消化管関連の合併症を伴うこともしばしばある。
・SARS-CoV-2の病態生理を理解することで治療開発につなげることが重要である。
→これを達成するために筆者らはiPS細胞からオルガノイドを作製。
→SARSウイルス感染に対してどのような応答が起きるかを研究・報告した。
・ウイルス感染により高度のケモカイン誘導が起こること、ACE2を発現するいくつかの細胞型はSARS-CoV-2疑似侵入ウイルスとSARS-CoV-2ウイルスの両方に対して許容度が低いかまったくないことがわかった。
→ウイルス進入に関与している因子はACE2以外にもあるのでは?
・このオルガノイドは薬剤スクリーニングにも利用できる。将来のウイルス治療開発に非常に有用。