こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】Tet2欠損は白血病発症の最初の段階?

今日はAbstractだけ。

 

Rajan V, Collett K, Woodside R, et al.

Stress hematopoiesis induces a proliferative advantage in TET2 deficiency.

Leukemia. 2021 Sep 30.

 

TET2機能喪失は、多くの血液悪性腫瘍において、そして多くの高齢者において生理的に見られる遺伝子変異である。TET2変異を有する個人がどのようにして骨髄増殖性疾患や急性白血病に至るかは分かっていない。ここではゼブラフィッシュのtet2変異体を用いて、tet2機能喪失が、p53アップレギュレートと結びついて造血分化制限につながることを示す。これはまた多くの遺伝性骨髄不全症候群の特徴である。感染によるサイトカイン刺激のような外的な刺激によって緊急造血が促進されるといったような固有の状況において、tet2欠損は造血幹細胞の大幅な増殖につながり、結果として、未熟な細胞の蓄積を招き、ここに何らかの遺伝的あるいはエピジェネティックな因子が加わると白血病を発症するような状況を作り出してしまう。ゼブラフィッシュで確認できたのと同じ状況はヒト造血幹細胞でも観察でき、TET2がストレス造血環境における白血病発症の最初のスイッチとなることを示している。