こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】p53不活性化によりWDR5はヒストンメチル化とは無関係に多能性幹細胞の自己複製能と分化能を調節する

Li Q, Mao F, Zhou B, et al.

p53 Integrates Temporal WDR5 Inputs during Neuroectoderm and Mesoderm Differentiation of Mouse Embryonic Stem Cells.

Cell Rep. 2020;30(2):465-480.e6.

 

多能性幹細胞を培養しているとp53変異が起こるが、このイベントが多能性幹細胞の運命を決定するためのエピジェネティックなコントロールにどのように関与しているかは明らかでなかった。p53をノックアウトしたマウスのES細胞のWdr5遺伝子を削除すると、自己複製が障害され、網膜神経外胚葉分化が妨げられ、生殖細胞減数分裂の特定遺伝子の抑制解除につながる。そしてWDR5をp53ノックアウトマウスに再導入すると、自己複製能と生殖細胞減数分裂遺伝子の発現が復活することが分かったが、網膜神経外胚葉分化はやはり戻りませんでした。機構的には、変異型WDR5はH3K4me3をほとんど含まないクロマチンを標的と市、p53ノックアウトES細胞にて遺伝子発現を調節する作用がある。MAXとWDR5は遺伝子サイレンシングに関与するポリコームリプレッサー複合体1のコアサブユニットであり、WDR5がES細胞運命決定の選択に関して、転写と抑制の間のクロストークをどのように媒介するかを明らかにしている。