こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

fl/flマウスの実際

fl/flマウスのことを書きました。

teicoplanin.hatenablog.com

 

今回はfl/flマウスを用いている実際の論文を紹介します。

Lengefeld J, Cheng CW, Maretich P, et al.

Cell size is a determinant of stem cell potential during aging.

Sci Adv. 2021 Nov 12;7(46):eabk0271.

 

論文自体の内容は、HSCの細胞サイズが大きくなってしまうことによって細胞機能が低下してしまうのではないか、というもの。

 

細胞サイズを制御しているのがmTOR経路なんですが、これに関与するTSC1をノックアウトしたマウスが欲しいのですが、TSC1ノックアウトマウスは耐性致死となってしまうため、fl/flマウスが用いられています。

 

で、ここでは、タモキシフェン投与下に全細胞にCreが発現するRosa-CreER(T)マウスを使用している。これは誘導型Cre組換え酵素(CreERT2)がノック印されているマウスである。これとfl/flマウスを交配してできたマウスにタモキシフェンを投与すると、TSC1ノックアウト状態が再現できる。

 

ちなみに上記論文では、TSC1ノックアウト状態ではHSCの細胞径が増大し、移植後の再構築能も低下してしまうという結果であった。