こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

fl/flマウスとは

実験にはよくKO=ノックアウトマウスが使用される。

 

ある特定の遺伝子Aが欠損した状態だと、癌が発症しやすくなるんじゃないか?

みたいな実験の時によく使われます。

 

しかし、この遺伝子Aが個体発生に必要な遺伝子の場合、欠損させるとすぐに死んでしまいます。(胎生致死)

 

大人の状態のマウスで検証できなくなってしまうのですが、ここで出てきたのがコンディショナルノックアウトマウスです。

 

ある特定の時期・組織だけで目的遺伝子をノックアウトさせることができる。

 

ここからは、Cyagenの「コンディショナルノックアウトの原理:Cre/loxPシステム」を参考に作成している。

 

Cre組換え酵素(Cyclization Recombination Enzyme)は、大腸菌ファージP1のCre遺伝子によってコードされ、アミノ酸343個からなる38 kDのタンパク質である。触媒活性だけでなく、制限酵素と同様に、loxP部位を特異的に識別することができる。したがって、Loxpセグメントの間の遺伝子を組換または削除することができる。

Cre組換え酵素とloxP部位

 

LoxP(locus of X−overP1)は元来バクテリオファージP1ののゲノム中にある34塩基からなる配列であり、 中央8 bpは非対称な配列でその両側13 bpが対称になっている。その中で、逆位反復配列はCre組換え酵素の特異識別部位であり、間隔領域はloxP部位の方向を決定する。

 

このCre/loxPシステムを用いて、コンディショナルノックアウトマウスを作るには2種類のトランスジェニックマウスが必要となる。

 

①loxP-(目的遺伝子)-loxP
 という感じで、目的遺伝子をloxPで挟んだ遺伝子配列を持ったマウス
 この状態では表現型は通常のマウスと変わらない。

②Cre配列を持ったマウス

 例えば、肝臓でのみ目的遺伝子をノックアウトしたいとした場合、

 肝臓でしか機能しないプロモーターの下流にCreを配置すると肝臓でのみ

 発現させることができる。

 

で、両者のマウスを掛け合わせるとこの両者を持ったマウスができる。

Creの存在下ではloxPに挟まれた遺伝子は削除されるので、両者が合わさったマウスの(今回の例では肝臓内で)目的遺伝子が削除されることになる。

 

以下は上記ホームページより引用。

 

Cre/loxPシステムを利用して特定遺伝子を特定条件でノックアウトするのにトランスジェニックマウスが2匹必要である。胚胎幹細胞技術によりトランスジェニックマウスを1匹取得する。まず体外で両端に別々loxP部位が一つ含む目的遺伝子の配列を作製する。そしてこの配列を胚胎幹細胞に入れ、相当組換を通して元の配列を置き換える。処理された胚胎幹細胞を偽妊娠マウスの子宮に植え付け、完全な胚胎に発育させ、最後にトランスジェニックマウスになる。このトランスジェニックマウスでは、loxP部位が対応する遺伝子のイントロンに導入されており、理論的には対応する遺伝子の機能に影響しないため、一般的にこのマウスの表現型は正常である。もう一つのトランスジェニックマウスは通常、卵母細胞注射または胚胎幹細胞技術により得る。このマウスで、Cre組換え酵素はある特定遺伝子のプロモーターの調節の下に置かれ、特定条件で発現することができる。最後に、この2匹のマウスを交配させて、上述の2種類の遺伝子型を同時に含む子世代マウスはある特定種類の細胞である特定遺伝子を欠失する。

Cre/loxPシステムを利用して特定遺伝子のノックアウトマウスを作製する

 

4. Cre/loxPシステムの利点と問題

現在、Cre/loxPシステムは最も広く使用されているコンディショナルノックアウトツールであり、主に次のような利点がある。

 

  • 効率が高い:Cre組換え酵素とloxP部位を持つDNAフラグメントが二量体を形成した後、十分な能力を提供してその後のDNA組換を誘発し、組換は簡単で効率的になる。
  • 特異性が強い:loxP配列の唯一性は遺伝子組換えの特異性を保証する。
  • 応用範囲が広い:Cre組換え酵素は生物の異なる組織、異なる生理条件で作用することができる。
  • II型プロモーターによって発現を起動することができる:Cre組換え酵素をコードする遺伝子は任意のII型プロモーターによって起動することができる。これにより、Cre組換え酵素は生物体の異なる細胞、組織、器官、または異なる発育段階または異なる生理条件での発現を保証し、高い組織および細胞特異性を実現する。

 

Cre/loxPシステムは独自の利点を持っているが、現在は主に標識遺伝子の削除または外来遺伝子の定点統合に限られている。このシステムは統合と削除においても欠陥がある。標記遺伝子は選択的に削除されたが、Cre酵素の切り口に34塩基のloxP部位が残した。これにより、冗長な外来DNA配列が依然として含まれる。さらに、このシステムは2つの部位を融合する反応機構は理論的根拠は乏しい。

 

要するに、Cre/loxP部位の特異性組換システムは正確に設計された遺伝的修飾を可能にしており、正確に外来遺伝子を導入するだけでなく、遺伝的スイッチを設定して、時空において外来遺伝子の発現と欠失を制御し、大きな応用の見通しを示している。現在、研究と応用はまだ不足であるすが、技術の発展につれて、このシステムはますます完璧になり、応用も広くなると信じております。

 

fl/flマウスを利用した文献↓

teicoplanin.hatenablog.com