勉強したことのメモ。
Dnmt3a
DNMT3A(DNA (cytosine-5)-methyltransferase 3A)は、DNA中の特定のCpG配列のシトシンに対するメチル基の転移を触媒する酵素であり、ヒトではDNMT3A遺伝子にコードされる[5][6]。この過程はDNAメチル化と呼ばれる。
出典:Wikipedia
本ブログでも何度か登場している。
メチル化のカギを握っており、エピジェネティクスの理解には欠かせない存在である。
このメチル化がなんなのかというと、ざっくり言いますと
DNA上にある遺伝子の発現を制御する領域(プロモーター)が
メチル化される→遺伝子発現がOffに
…これを担っているのはDNAメチル化酵素DNMT3AとDNMT3B
脱メチル化される→遺伝子発現がOnに
....これを担っているのはTet1,2,3などのTetファミリー
出典:
上記のメチル化によって、同じ遺伝子・同じDNAでもそのOn/Offが調節されることによって発現が異なってくる→これがエピジェネティックな調節。
白血病などの血液疾患や近年話題のClonal hematopoiesisでもしばしばDnmt3a変異が観察される。
全エクソンシークエンスによって筆者らは、DNMT3A, TET2, ASXL1の遺伝子変異を有する患者で加齢性障害が生じることを特定した。これらの変異はMDS患者や急性白血病患者でもよく見られる。
出典:
このDnmt3a機能に関する論文を1つ紹介。
Jeong M, Park HJ, Celik H, et al.
Loss of Dnmt3a Immortalizes Hematopoietic Stem Cells In Vivo.
Cell Rep. 2018 Apr 3;23(1):1-10.
- ES細胞は自己複製能と多分化能という幹細胞性を維持しながらin vitroで無制限に増殖させることが可能。
これに対し造血幹細胞HSCは同じ幹細胞ではあるが増殖には限界がある。 - 連続移植をしていくと再増殖能が低下していってしまう。
- 過去の研究でde novo DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)の遺伝的不活性化がマウスHSCの自己複製を促進することが示された。
- Dnmt3aはクローン性造血CHIPとも関連。
- おそらくDnmt3a喪失は自己複製を強化するのであろう。→この限界を本論文で調査。
- その結果、Dnmt3aKO HSCは実に12回移植しても自己複製能を保持できる。
- RNAシークエンスなどの結果から、Dnmt3a欠損によって自己複製エピゲノムが安定し、HSC維持に関連する遺伝子のサイレンシングが起きにくくなる効果があることが分かった。
- Dnmt3a KOで自己複製能が強化される代わりに分化能は失われる。→後にもう一度Dnmt3aを発現させると分化能は復活する?→復活せず。
- Dnmt3a変異がClonal hematopoiesisの開始要因であることは推察されるが悪性転化の誘因となる遺伝子などは発見できなかった。
Discussion
- Dnmt3a KOでHSCはin vivoで不死化する!
- マウスの寿命をはるかに超えて生存できる。
- Dnmt3aがエピジェネティックな調節機能を果たしている。
- これがClonal hematopoiesisにもつながる。
- さらなる遺伝子変異が起こると悪性転化につながる可能性がある。